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【経済】

KYB免震装置不正 47都道府県で改ざん 東洋ゴムの件数を大きく上回る

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 建物の安全を支える免震装置に裏切りが発覚した。装置メーカー、KYBで検査データの改ざんが脈々と引き継がれ、マンションや病院、教育施設など全都道府県の物件で不正が横行。二〇一五年に表面化した東洋ゴム工業の免震偽装を規模で上回り、全国に不安が広がった。 

▽責任放棄

 「検査でNGが出れば、分解と調整で五時間はかかる。データを書き換えるよう口頭で引き継がれていた」。KYBは十六日の記者会見で、不正の原因は従業員が再検査の手間を省くためだったというあきれた現場の実態を明らかにした。

 改ざんは〇三年から続き、全国で計九百八十六件に上った。厳しいノルマや現場管理の甘さが背景にあったとみられるが、中島康輔社長は淡々とした口調で「内部調査では全てを把握できない」と説明責任を半ば放棄。実態解明は外部の弁護士らのチームに委ねられた。

 対象となった施設名もこの日は明かさず「関係者や国土交通省と相談して公表する」と述べるだけ。利用者の不安に応える姿勢は乏しかった。

▽最悪の事態

 国交省から連絡が入った各自治体は慌ただしく対応に追われた。KYBは免震・制振用オイルダンパーの国内シェア首位。納入先は東京スカイツリーなど多岐にわたり、大阪府の府庁本館は問題の改ざん製品を使っていた。

 風評被害への警戒感や「国から開示しないよう言われている」(関東の自治体)ことなどを理由に大半の自治体は取材に対し多くを語らなかったが、大分県は建設中の宇佐市役所や県立美術館など不正製品が使われていた建物名を公表し、早期の交換を訴えた。他の自治体からも「早く状況を説明してほしい」「会社を信じていたので残念だ」と不満の声が漏れた。

 東洋ゴムの問題後、監視態勢を強化してきたはずの国交省も誤算が重なり、KYBの不正を見抜けなかった。過去の調査が不徹底で、東洋ゴムと異なるタイプの装置を手掛けるKYBへの対応が甘くなったほか、製品の無作為調査も対象企業数が多く、KYBに対しては未着手だった。幹部は「最悪の事態だ」と悔しがった。

▽重い代償

 社長が辞任し、刑事事件に発展した東洋ゴムのケースでは、免震装置ゴムのデータを国の基準に合うよう改ざんし、全国の官公庁やマンション、百五十四棟に出荷していた。対象件数の比較では、KYBはそれを大きく上回る。

 東洋ゴムは問題製品の交換作業を進めているが、工事を済ませたのは今年九月末時点で九十八棟にとどまっている。建物の所有者や工事業者との調整に時間がかかり、発覚から三年以上が過ぎた今も尾を引いている状況だ。不正に伴い計上した特別損失も累計で千四百億円を超え、今後さらに膨らむ可能性がある。

 KYBもこれから同じいばらの道をたどる公算が大きい。「地震に備え、お客様の安全を守る」とホームページでうたった宣伝文句が今はむなしく、安全をないがしろにした代償が重くのしかかる。

 

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