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【経済】

<ゴーン事件 どう見る> 政治決着の可能性も 自動車アナリスト・中西孝樹氏に聞く

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 日産自動車前会長のカルロス・ゴーン容疑者の逮捕を受け、日産とフランス大手ルノーとの間で、両社のアライアンス(企業連合)を巡る主導権争いが激しさを増してきた。「日仏連合」の今後はどうなるのか。自動車アナリストの中西孝樹氏(56)に聞いた。 (矢野修平)

 −日産とルノーの関係はこれから変わるのか。

 「三つのシナリオが考えられる。最も破壊的なのが対立の末に関係が解消されるケースだ。ルノーからの不当な経営への介入があった場合は日産はルノー株を買い増すことで、ルノーが日産に対して持つ議決権をなくすことができる契約がある。これは日産の『最終兵器』だが、『ボタン』が押されるのは、両社の関係が壊れたときだ」

 「提携を解消しても自分たちが(自動車業界の)弱者になるだけだから、この契約は強力な抑止力として働く。このシナリオに進む確率は低いだろう」

 −対立回避となれば、どんな着地点になるのか。

 「両社ともアライアンスを守ることが最優先だ。対立が表面化する資本関係の議論を避ける場合は『静観』となる。これは資本上の支配関係を維持したいルノー側が望むシナリオだ」

 −「対立」と「静観」以外の第三のシナリオは。

 「日産はゴーン容疑者の逮捕を機に(ルノーが日産株の43・4%を持つ)資本上の不平等な関係の見直しを含めた協議を進めたいが、ルノーはあれこれ理由をつけ、議論を長期化させる可能性がある。『対等な関係には資本関係の見直しが必要』とルノー側も合意すれば、『リバランス』となり、株式を対等に持ち合う構図となるだろう」

 「そうなれば日産の独立性は確保されるが、ルノーやフランス政府のメンツが立たない。最終的には、日仏政府を巻き込んで政治決着という形になるかもしれない」

 −主導権争いは、自動運転などの技術変革に悪影響を及ぼすのではないか。

 「自動車産業は百年に一度の変革期にあり、大規模な技術開発を進められるのは世界で四、五グループしかない。内紛に時間とエネルギーを浪費し弱体化すれば、トヨタ自動車などとの差は開くばかりだ」

 −今回の問題を巡る日産の企業責任をどう考える。

 「ルノーやフランス政府が経営統合を求めるのは資本の論理では当然で、その抵抗勢力となってきたのがゴーン容疑者だ。動機は自らの保身で、権力が集中した結果、不正の遠因ともなった。しかし日産もゴーン容疑者への権力集中を受け入れ、利用してきた。現経営陣の責任も追及されるべきだ」

<日産自動車とルノーの資本関係>日産は経営不振に陥った1999年、ルノーから救済を受ける形で資本提携を結んだ。このため現在ルノーは日産株の43・4%を保有。一方、日産のルノーへの出資率は15%だが、フランスの商法の規定で議決権は持てず資本上、両社は不平等な関係にある。ただ2015年の契約で、ルノーが日産の役員人事などの経営に介入した場合、日産は事前の同意なくルノー株を25%まで買い増し、ルノーが持つ日産に対する議決権を消滅させられるようになった。

<なかにし・たかき>1986年米オレゴン大卒。メリルリンチ日本証券、JPモルガン証券東京支店などで自動車業界の調査を担当。2013年に独立し、現在はナカニシ自動車産業リサーチの代表兼アナリスト。著書に「トヨタ対VW」「オサムイズム」「CASE革命」など。

 

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