東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 経済 > 紙面から > 3月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【経済】

<働き方改革の死角>政府「企業活躍」を推進 事業主増、保護策は放置

中央労働委員会の団交権を認めないとの決定を受け、涙ぐむコンビニ加盟店ユニオンの人たち。左から3人目が酒井孝典執行委員長=15日午後、東京都千代田区の厚生労働省で

写真

 コンビニのオーナーやクリーニング店などの個人事業主の過酷な労働条件が浮き彫りになってきた。安倍晋三首相は「正社員の有効求人倍率が『一』を超えた」と指摘、企業が正社員の雇用を増やしている点を強調するが、一方で個人事業主の活用も企業に進言。「社員」という存在自体を否定する方針も打ち出している。 (池尾伸一、矢野修平)

 「従来、フルタイムの常用雇用が当たり前だったが、『雇用によらない働き方』が選択肢となる」。経済産業省は二〇一六年の報告書で、企業は人材を抱え込むより、外部の個人事業主などに外注した方が効率性が改善すると説いた。

 厚生労働省の「働き方の未来2035」はさらに過激だ。「多くの人はプロジェクト期間内はその企業に所属するが、終わると別の企業に所属する」とし「正社員」の消滅を予測する。財務省も足並みをそろえ昨年末、サラリーマン増税の一方で個人事業主を減税にし、事業主の増加を誘導する税改正を打ち出した。

 金沢大の伍賀一道(ごかかずみち)名誉教授は、政府はこうした方針を「企業が抱える労働者は一握りに限定し残りは出し入れ容易な人材に変え、企業を身軽にするため」に決めたと推測。「企業が世界一活躍しやすい国」を掲げる安倍政権としては、企業を雇用責任から開放する狙いがあるとみる。

 しかし個人事業主の保護策は放置されたままだ。

 「人間として限界まで働いている。改善するには団体交渉しかないのに…」。セブン−イレブンの店主らでつくるコンビニ加盟店ユニオンの酒井孝典執行委員長は十五日の記者会見で、悔しそうに言った。

 コンビニ店主らは営業時間の短縮などを求め、本部と交渉しようとしているが、厚労省が管轄する中央労働委員会は十五日「店主は労働者ではない」とし団交権を否定。都内のクリーニング店主らの労組に対しても、会社側は「組合とは認識していない」と主張し、休業日増などの要求が通るかは見通しにくい。

 海外でもITを使い個人事業主の立場で仕事をする人が急増。欧州連合(EU)では、雇用関係がなくても事実上企業の支配下に置かれていれば労働者とみなし、発注企業への最低報酬の義務付けなどを労働法で定める案が浮上している。

 コンビニ店主らの代理人を務める棗(なつめ)一郎弁護士は「個人事業主の保護のためにやれることはたくさんあるのに、日本政府は何もしていない。このままなら不安定な立場の人が増え、社会が混乱する」と言う。

写真
 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報