東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 経済 > 紙面から > 3月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【経済】

<働き方改革の死角>個人事業主、働かせ放題 残業規制の網をすり抜け

過酷な労働条件の下で働くクリーニング店の店主=東京都内で(芹沢純生撮影)

写真

 セブン−イレブンの加盟店が二十四時間営業の緩和を求めて会社側と対立する中、東京都内のクリーニングチェーン加盟店のオーナーらも労働組合を結成し、年中無休の撤回などを要求していることが分かった。個人事業主であるチェーン店オーナーの労働条件は過酷だ。政府は「働き方改革」で会社員らの残業上限規制などを推進する一方、「抜け穴」ともいえる個人事業主の活用を企業に奨励しており、矛盾が拡大している。 (池尾伸一)

 労組をつくったのは、都内を中心に約二十店を運営するステージコーポレーション(千葉県市川市)傘下の七店の店主。

 夫を亡くし家計を支えるためにパート社員として直営店の責任者を務めていた五十代のAさんは二〇一七年、会社から「オーナーを引き受けてもらわねば、パートをやめてもらう」と言われて店長になった。

 負担は重かった。正月三が日以外は休みなしで午前九時〜午後八時の営業が義務。週一日はパート従業員に任せて休むが、残りは午前八時半から午後八時まで十一時間半働いている。

 労働時間は月三百時間。会社員なら残業が法定労働時間(約百八十時間)を百時間超えれば過労死が認定される水準だが、Aさんはこれを上回る百二十時間の残業をしている計算だ。母の葬儀の際も休業が許されなかった仲間もいた。

 クリーニングは本社の工場で一括で行い、売り上げの八割は会社の取り分。年四百六十万円の収入の最低保証はあるが、月割りにした三十八万円からパート従業員の給料(十五万円)やチラシ作成の販促費などを差し引くと手元に残るのは月約二十万円。時給に換算すれば都の最低賃金(九百八十五円)を下回る。Aさんは「朝から晩まで働き、これではきつい」と話す。

 さらに会社は最近、一部店長の最低保証を四百二十万円に下げた。店長はパート出身者が多いが「パートの時の方が収入は多かった」と言う人もいる。

 企業が雇う従業員には最低賃金以上の支給が必要で過度な残業は違法。一方、個人事業主への業務委託なら残業規制はかからず、社会保険負担や交通費の支給も必要ない。店長らを支援する広域労組の日本労働評議会は「会社は社員なら許されぬ過酷な条件を店長を『名ばかり個人事業主』にし押しつけている」と指摘。これに対しステージコーポレーションは「話し合っている段階なので何も言えない」(弁護士)と語る。

 チェーン店の店主やインターネットで仕事を受注するIT技術者など個人事業主は増えている。政府は企業に個人事業主の活用を勧めるが、保護策は進んでいない。労働問題に詳しい棗(なつめ)一郎弁護士は「政府が安易に個人事業主を推進するのは問題。今やるべきは早急に保護策を講ずることだ」と警告する。

<個人事業主> 会社などの法人を設立せず、個人で税務署に開業届を出して事業を営む人のこと。カメラマンなど特定の組織に属さず専門技能を提供するフリーランスも個人事業主に区分することが多い。人数の正確な統計はないが、人材紹介のランサーズ(東京)は個人事業主(フリーランスを含む)を1100万人と推計する。

写真
 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報