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【経済】

<働き方改革の死角>抜け道拡大なら格差是正不発に

退職金を受け取る権利を認定した判決を受け「一歩前進」と語る東京メトロの売店で働いていた女性たち=先月20日、都内で

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 働き方改革の目玉として政府が掲げる「同一労働同一賃金」。だが、パソナの例で明らかになったように、手当支給の一方で基本給を下げるなど抜け道を行く動きが広がれば、その理念は根本から揺らぐ。 (池尾伸一)

 「非正規という言葉を一掃する」。安倍晋三首相は二〇一六年六月の記者会見で強調した。もともと安倍政権は、アベノミクスとして金融の大幅緩和を通じ所得の低い人々にも経済的な恩恵をもたらす「トリクルダウン」を狙っていた。だが、金融緩和は円安による物価上昇などの副作用を招き格差はむしろ拡大。非正規の待遇改善はその挽回策の面がある。

 同一労働同一賃金に関する政府のガイドラインでは、賞与や通勤手当など基本的なものは非正規にも払うべきだと明記。住宅手当、皆勤手当など各項目についても支給しないと問題になるケースを記し、待遇改善を求める方針だ。

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 裁判でも昨年、最高裁が、非正規のトラック運転手の人にも会社が皆勤手当や住宅手当などを支払うよう判決。今年二月には東京メトロの売店の非正規女性らへ退職金支給を命じる判決を出した。

 企業や派遣会社が政府のガイドラインや判例に従い、各種の手当支給に動く可能性もある。

 だが、これが本当に非正規の人々の待遇向上につながるかは疑わしい。

 特に賃金の柱である基本給については、従業員の能力や成果をどうみるかなど企業の裁量が働く余地が大きく、経営側の意向一つで引き下げたり数年かけて抑制したりできる。

 非正規問題に詳しい中野麻美弁護士は「企業が手当や一時金支給の一方で、基本給を抑える手段に出れば、非正規の人々の収入は結局、変わらない」と警告する。その場合、ガイドラインに沿って手当支給などが形だけ整っても、給料の総額は従来以下ということになりかねない。

 「世界一企業が活躍しやすい国」を掲げる安倍政権はもともと企業の人件費増加につながる非正規社員の底上げには消極的。厚生労働省も派遣社員への通勤手当を支給するよう通達などで呼び掛けながらも、業界が支給に動かないことを事実上放置してきた。

 非正規の人々の待遇改善が進むかは、厚労省などが本気で監視、警告に動くかにかかっている。

 現時点では労働組合に入っていない人が多い非正規社員の人々も横の連帯を強め、政府や企業を監視する必要がありそうだ。

 

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