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【経済】

<働き方改革の死角>人への投資 惜しむ企業 16年社員教育費 91年より3割減

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 企業が持つ現金・預金が過去最高を記録する一方、社員向けの教育訓練費は近年大幅に減っていることが分かった。政府は4月から残業時間に上限を設ける規制を導入するが、労働時間を短くする中で利益の水準を維持するには、社員の能力向上が欠かせない。経費削減を優先させ「人への投資」を惜しむ企業の姿勢が問われている。 (木村留美)

 財務省が公表した二〇一七年度の法人企業統計によると、企業が持つ現預金は二百二十一兆円に達し、過去最高を更新した。安倍政権の金融緩和による円安と法人税の減税で企業の利益は増加。一方で企業は設備投資や給与増を抑制していることが影響した。

 さらに経費削減の一環で企業が縮小しているのが、研修費や資格取得の補助などの教育訓練費だ。

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 厚生労働省の調査では、企業の社員一人あたりの教育訓練費は一六年時点で月千百十二円。年換算でも約一万三千円にすぎず、一九九一年比で33%減った。学習院大の宮川努教授の推計では、教育訓練費の総額も九一年は二兆七千億円に上ったが、一五年には約六分の一の四千六百億円に減少した。金融業界などが大幅に減らしたことなどが影響しており、一六年以降も横ばいで低迷している。

 企業が「人に投資しない」慣行は今後、日本経済の足を引っ張る懸念がある。「働き方改革」で労働時間が短くなる中で利益を上げるには、社員が効率的に成果(付加価値)を上げることが求められるが、それには社員の能力アップが欠かせないからだ。

 もともと日本企業の社員教育は、中堅やベテランの社員が自らの体験を実際の仕事を通じて若手に教える「OJT」と呼ばれる方式が基本だった。九〇年代の教育訓練費は現在より多かったといっても、海外の企業に比べて教育訓練にお金を使ってこなかった。

 だが第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「OJTも(人手不足などで)職場の余裕がなくなりつつある中で機能しなくなっている」と指摘。IT化やグローバル化で職場で求められる技術や能力も変わってきており「個人の頑張りだけで生産性を向上させるには限界がある」と話す。

 日本企業の教育訓練費の少なさは鮮明だ。宮川教授の推計では、一〇〜一四年の五年平均での国内総生産(GDP)に占める日本企業の能力開発費の比率は0・1%で、米国(約2・0%)や英国(約1・0%)の十分の一以下だった。

 宮川教授は「外国人観光客の増加に対応するための語学教育やIT教育など投資効果が上がる分野は多い」と指摘。積み上がる現預金を教育に活用すべきだと主張する。

 

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