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【経済】

<働き方改革の死角>日本、国際水準遠く パワハラ・セクハラ対策

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 職場でのパワハラやセクハラの規制策について日本の国際潮流からの周回遅れが鮮明になっている。今年創立百周年になる国際労働機関(ILO)は十日からスイス・ジュネーブで開く総会で、職場でのハラスメント全般を禁止する条約を採択する。だが、日本が五月末に成立させた女性活躍・ハラスメント規制法は条約案とのかい離が大きく、日本の条約批准は現時点では困難との見方が多い。 (岸本拓也)

 条約案は昨年から加盟百八十七カ国が議論を本格化させており、交渉筋によると今総会で最終日の二十一日に出席者の三分の二以上の賛成を得て条約が採択される見込みという。

 だが、日本が批准(国内同意手続き)にすんなり進むかは分からない。国内規制法が来春以降施行されても条約案が求める水準に遠く及ばないためだ。

 最大の違いは、ハラスメントの禁止規定だ。

 ILO事務局がまとめた条約原案によると、ハラスメントを「身体的、精神的、性的または経済的危害を引き起こす可能性のある行為」と幅広く定義し、これらの行為を「法的に禁止する」と明記。制裁も設ける。刑事罰まで設けるかは各国の判断だが法律で禁止されると、民事訴訟で賠償請求の根拠となるなど行為の抑止につながり被害者も救済しやすくなる。すでに欧州など多くの国が禁止規定を設けている。

 これに対し、日本の法律はハラスメント行為を禁止する規定は盛り込まれず、相談窓口設置など防止対策を企業に義務付ける内容にとどまる。被害者や加害者の範囲についても条約案は、取引先や顧客、求職者など第三者まで幅広いが、日本は企業の幹部・従業員に限定している。

 日本の規制が甘くなったのは、経団連など経済界が訴訟リスクや罰則を恐れ、規制に反対、政府が配慮したためだ。

 連合など労働組合は追加改正や指針強化を急ぎ、速やかに条約を批准することを主張しているが、日本政府は慎重。根本匠厚生労働相は条約を支持し、批准するかについては国会で「内容を踏まえて検討する」と明言を避けている。

 昨年の総会では欧州やアフリカ諸国が主導し、条約制定が決まったが、日本は必要性について立場を保留。中身に関しても日本は「各国の事情に合わせ柔軟な内容にすべきだ」と被害の対象者の限定など水準引き下げを要求した。出席者によると、「後ろ向きな主張が多い日本政府に各国から失笑が漏れた」という。

 今総会でも、日本が昨年同様に条約基準の緩和を主張するなら、ハラスメント根絶に向けた国際的な流れから孤立しかねない。ハラスメント問題に詳しい労働政策研究・研修機構の内藤忍(しの)副主任研究員は「条約基準を緩くして批准しても意味はない。本当にハラスメントがなくなる実効性がある対策を急ぐのが本筋だ」と指摘している。

◆ハラスメント根絶 実効性ある法律を

 労働政策研究・研修機構 内藤忍副主任研究員に聞く

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 職場の暴力とハラスメント撲滅を目指す条約制定に向けた国際労働機関(ILO)の議論の見通しや、日本の取り組みについて、労働政策研究・研修機構の内藤忍(しの)副主任研究員=写真=に聞いた。

 −日本でパワハラ規制法が成立した。

 「パワハラに関する法整備がなかったことからは一歩前進だ。だが、問題は実効性だ。法律は企業に相談窓口設置など防止対策を義務付けた。しかし、先行するセクハラ対策では、同様に防止対策を義務付けたが、何もしていない企業が四割あり、被害者も減っていない。行政の人員も乏しいので企業が対策を講じているか監視するのは難しく、本当に被害が減るとは思えない」

 −ILO条約原案は、法的に禁止と明記し、制裁も設けるとしている。

 「ハラスメントはしてはならないと法律ではっきり禁止することが、まずは抑止力になる。たとえば、英国の法律には、禁止行為にハラスメントが明記されている。損害賠償の根拠規定にもなるので、被害者の救済にもつながる。日本で禁止規定が入らなかったのは残念だ」

 −ILOの新条約が採択されたら、日本は批准できるか。

 「世界的な(性被害を告発する)『#MeToo』運動の広がりもあり、日本政府も可能なら批准したいと考えているはず。しかし、日本の基準では(批准)できないだろう。日本政府は昨年のILO総会で、『皆が達成できる基準がいい』と主張したが、日本が批准できる水準まで(条約の基準を)落として批准しても意味はない。ハラスメントがなくなり、救済ができる法律を作ることこそが大事だ」

 −ILOでの議論は今後の対策に生かされるか。

 「大切なのは、ILOでの議論を機に、日本の取り組みの実効性をどこまで高められるかだ。日本では今後、厚労省の審議会で具体的な指針を議論するが、いまILOが設定している高い基準を達成し、ハラスメント撲滅に向かうことを期待している」 (岸本拓也)

<ないとう・しの> 2006年に早稲田大院博士後期課程単位取得後、労働政策研究・研修機構研究員に。厚生労働省「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキンググループ」委員など歴任。専門は労働法。

<ILO条約> 国連の国際労働機関(ILO)が労働環境改善のため定める。拘束力を持ち、批准した国は条約に合わせ国内法整備を求められる。強制労働・児童労働の禁止など多岐に及び、これまでに189条約が制定された。日本は労働時間規制は批准していないなど批准数は49と先進国平均を下回る。条約と別に各国事情を考慮し改善を求める勧告もあるが、拘束力はない。

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