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【経済】

パンプス強制、悩む企業  「#KuToo」広がる中、ヒール規定維持 スニーカー容認も

靴売り場でハイヒールを試し履きする顧客=東京・銀座で(河口貞史撮影)

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 女性が職場でパンプスやヒールの高い靴を強制されることへの議論が巻き起こっている。フルタイムで働く女性の実に8割が、足指や足の悩み・トラブルを抱えているとの調査結果もある。政府も企業も、働き方改革というのであれば、まずは「足元」から見つめ直すべきでは−。 (嶋村光希子)

 「足に傷ができて血まみれになりながらも、ばんそうこうを貼りながら我慢している」。こう嘆くのは都内のアパレル販売員の五十代女性。職場でパンプスを強いられている。

 ハイヒールやパンプスを長時間履いた経験のない人に、その苦痛を理解してもらうことは難しい。つま先が細く、かかとが高くて前のめりになる靴は、靴ずれや外反母趾(がいはんぼし)などの健康被害を及ぼしている。

 実際の企業現場はどうか。ホテルオークラは、フロントやレストランの現場スタッフにパンプスを指定する。高さの規定はない。担当者は「立ち仕事や歩き回ることも多く、高いヒールは物理的に履きづらい」。身だしなみと社員の安全の両立に悩む姿がにじみ出た。

 百貨店業界も同様。小田急の社内ルールでは、制服を着る女性スタッフはパンプスやヒールのないフラットシューズなど。ヒールの高さは五センチ以内という。

 格安航空会社(LCC)のジェットスター・ジャパンはヒールが高さ四〜六センチ、接地面の幅は二〜四センチと細かく規定。フライト中はヒール高二センチ程度も可とする。学生の就職活動も、リクルートスーツにパンプスは定番化している。

 ただ、企業の中には現状を変えようとの動きも出ている。住友生命保険はスニーカー勤務を奨励するカジュアルデーを六月から毎日に。担当者は「顧客訪問の多い業務ではフォーマルを求める声もある。部署によって柔軟に対応している」と語る。

 靴の工夫で苦痛を和らげる苦肉の策も。ワコールのパンプス「サクセスウォーク」は、つま先への負担を軽減するため、かかとの真下にヒールをつけて安定感を増す独自構造。累計販売百万足のヒットとなった。

 百貨店の松屋銀座では“走れるパンプス”としてクッション性を高めた商品が他のパンプス商品より値段は二〜三割高いものの売り上げを伸ばしている。

 「社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲を超えているかがポイント」。国会で問われた根本匠厚生労働相はこう答弁。けがをした労働者に強制すればパワハラにあたるとの見解も示した。ただ、働き方改革の旗振り役の同相が社会通念を前面に出すようでは改革もつまずきかねない。

 企業のダイバーシティー(多様性)の普及に努め、自身はヒールを愛用するイー・ウーマンの佐々木かをり社長は「女性の社会進出は広がったが、仕事着についての議論が追いついていない。パンプス強制は必ずしも正しくない。仕事と服装についていま一度考える良い機会では」と訴えている。

<「#KuToo」運動> 職場で足に大きな負担がかかるパンプスやハイヒールを女性にのみ義務付けることは性差別だとし、強制をやめるよう求める一連の行動。女優でライターの石川優実さん(32)が、ネット上で集まった約1万9000人の署名を今月3日、厚生労働省に提出した。セクハラ被害を訴えた「#MeToo」にちなみ、「靴」と、履くことに伴う「苦痛」をかけて名付けた。

 

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