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【経済】

G20大阪サミット 日本の役割は 共栄の議論主導を

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◇中央学院大 中川淳司教授に聞く

 大阪市で二十八、二十九日に開かれる二十カ国・地域首脳会議(G20サミット)を前にあった閣僚級会合の共同声明では「反保護主義」を明確に打ち出せなかった。国際経済法に詳しい中川淳司中央学院大教授に、閣僚会議の議論の評価や大阪サミットでの日本の役割などを聞いた。 (矢野修平)

 −茨城県つくば市での貿易・デジタル経済相会合がまとめた共同声明では「保護主義と闘う」との文言が入らなかった。

 「声明は『貿易上の緊張に対応』する必要性を確認した。米中貿易戦争を名指ししない形で言及したもので、自制と是正を求めている。それを米中両国に認めさせた意義はある。G20は信頼醸成の場だ。危機感をあおる表現は、関税引き上げを脅しに使うトランプ米大統領の戦略に利することにもなる」

 −米中貿易戦争は激しさを増している。

 「背景にはハイテク技術分野での中国の台頭と、それに対する覇権国、米国の焦りがある。貿易戦争は米中間の覇権争いの流れで生まれた摩擦の一つだ」

 −貿易秩序の基盤となる世界貿易機関(WTO)の改革も急務だ。

 「声明はWTO改革の具体的な方向性を盛り込んだ。『透明性と通報の改革』は、自国の産業補助の報告義務を怠っている中国が念頭にある。有志国が進めてきた電子商取引の議論も、G20全体で後押しできたのではないか」

 −韓国による水産物禁輸を巡るWTOへの訴えで、日本は敗訴した。政府は紛争処理制度の改革を訴えている。

 「一審で議論が尽くされていないとの理由で、二審(上級委員会)は日本の主張を退けた。現在は差し戻し制度がなく、今回のようにどちらの訴えが正しいか結論を出さないままになることがあり、改革が必要だ。声明も『行動が必要』と踏み込んだ。ただ、日本は今回、韓国の禁輸が科学的かどうかを争わないなど戦略を誤った」

 −大阪サミットで議長を務める日本への注文は。

 「米国が保護主義を強め、欧州が英国の欧州連合(EU)離脱で揺らいでいる今、日本がリーダーシップを発揮できるチャンスだ。覇権の競い合いから、ルールに基づいて各国が共存共栄できる世界へ議論を主導することが、日本に求められる。全参加国の共感を得られる新しい貿易秩序の姿、世界的なデザインを打ち出してほしい」

◆貿易相会合 共同声明要旨 

▽貿易と投資の拡大は経済的繁栄と持続可能な成長を促進する上で重要な要因となることに同意する。

▽現在の貿易環境から生じる下方リスクが世界経済の成長を鈍化させる可能性がある。

▽貿易上の緊張に対応し、互恵的な貿易関係を醸成する必要性を確認した。

▽世界貿易機関(WTO)改革で、通報制度の厳格化や透明性確保が必要。紛争解決制度の機能改善を進める。

▽WTOで電子商取引のルール作りに引き続き取り組む。

<なかがわ・じゅんじ> 1955年、広島県生まれ。東京大法卒、同大法学博士。同大社会科学研究所教授を経て、2019年4月から中央学院大教授。専攻は国際経済法。編著「TPPコンメンタール」(日本関税協会)を今月下旬に刊行。

 

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