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【経済】

あなたの格、点数化続々 ネット企業、行動データ活用

 インターネットを通じてさまざまなサービスを提供するIT企業が、ネット上の幅広い消費行動などから利用者の信用度合いを採点し格付けする「スコアリングサービス」が増えてきた。どれだけ信用できる人物かを測って社内外で共有する仕組みだが、得点によって、仕事を得る機会が左右されるなど監視社会や格差社会を助長する懸念もある。 (吉田通夫)

 ヤフーは登録会員としてサービスを利用している人を対象に採点を七月一日から実施。ネット通販など自社サービスでの支払い状況や、ホテルなどの予約のキャンセル率、私物の売買サービス(ヤフオク!)でのほかの利用者からの評価といった情報から、人工知能(AI)が九百点満点で点数を付けている。得点に応じた優待制度を検討するほか、利用者が同意すれば外部企業に得点を渡す。

 例えば組織に属さずに働く「フリーランス」への仕事を仲介する「ランサーズ」は、ヤフーでの高得点の利用者は信用できるとして優先的に仕事を回す。利用者は良い仕事にありつくため、ヤフーのサービスを利用するという構図だ。

 LINE(ライン)も、サービスの一環として提供しているオンライン家計簿などのデータから消費行動傾向を採点し、個人向け融資に利用。情報は民泊仲介のエアビーアンドビーなど十社以上に提供する。

 二〇一七年からサービスを始めているみずほ銀行とソフトバンクの合弁会社「Jスコア」は、利用者が性格診断も含め最大百五十にのぼる質問に回答し、それに基づき採点。自社の個人向け融資に利用するほか、外部の十社以上に提供し優待を用意する。

 NTTドコモも携帯料金の支払いやサービスの利用状況により利用者を採点し、自社や他社による融資の際などに活用する予定だ。

 企業は独自に「お得意さま」を開拓してきたが、スコアリングが普及すれば、複数の企業が「優良顧客」を共有し、顧客開拓の手間が省ける。高スコアの利用者は低利でお金を借りられるなどのメリットがある。しかし、データの監視を恐れて利用者が自由に利用できなくなる可能性があるほか、低スコアの人やスコア算出に同意しない人は高スコアの人に比べ不利になる懸念がある。

 スコアリングで先行する中国では、アリババグループが提供するスコアが社会的に普及。低い得点の人やサービスを利用しない人が就職や結婚で不利になる「バーチャルスラム(仮想貧困)」が現実になっている。

 慶応義塾大法科大学院の山本龍彦教授(憲法)は「ビッグデータやAIによる採点は、人物を多面的に評価する道具にもなるが、監視社会や格差社会を助長する危険もはらむ」と指摘。「スコア利用の範囲を限定したり、利用者がおかしな採点に異議申し立てできる法整備も考えるべきだ」と話す。

◆知らぬ間に採点も 「利用者軽視」ヤフーに批判

 スコアリングサービスをめぐっては、個人情報の取り扱いをめぐっても懸念が浮上している。

 特にヤフーの手法は物議を醸している。

 LINE(ライン)やJスコアの場合、まずスコア算出を開始する時点で、利用者が申し込んで同意、外部の企業にも提供する場合は、さらにスコア提供への同意を利用者に求めている。

 しかし、ヤフーの場合は会員登録した時点で、スコア算出に同意したことになっている。会員は、スコア算出をストップしようとすれば、そのためのページを探し出して変更しなければならない。しかも、算出されたスコアは利用者には知らされず、申請して郵送で受け取らなければならない。このため利用者が知らないうちに採点されているケースもあるとみられる。

 ヤフーが6月3日にスコアリングについて発表して以降、ネット上では「利用者を軽視している」と批判が噴出。ツイッターなどでは、利用者らにスコア算出停止の設定変更を呼び掛ける書き込みが相次いだ。

 ヤフーは同21日にホームページを更新し、「説明の至らない点があった」と陳謝。利用者へのスコア開示を郵送に限っているのは「本人の身元確認を重視しているため」などと釈明に追われている。

 大和総研の亀井亜希子研究員は「利用者に丁寧に同意を取っていかねばスコアリング自体に不信を招き普及しないだろう」と話している。

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