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【経済】

「仮想貧困」生む恐れ スコアリング、AIが信用度採点

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◆慶大法科大学院・山本教授に聞く

 インターネット上での支払いや行動データなどを通じて人工知能(AI)が人の信用度を採点する「スコアリング」が日本でも拡大してきた。先行する中国では経済活動を支える基盤として普及する一方、低い得点や得点を持たない国民が就職などで不利になる弊害も。データと法律の関係に詳しい慶応大法科大学院の山本龍彦教授(憲法、情報法)に、スコアリングの功罪と必要な対応を聞いた。 (聞き手・吉田通夫)

 −スコアの利点は。

 「さまざまなデータをAIが考慮することで、人物を評価する際に、表面だけでなく多角的に分析できる。資産がない人でも、生活習慣を評価することで信用スコアを持ち、融資を受けられるケースも出てくる」

 −課題は。

 「行動がデータとして集められ、採点されるとなると、自分らしく自由に振る舞うことができなくなるだろう。ある種の監視社会だ。多くの人がスコアを上げようと、企業が決める『善い行い』に合わせた行動をとれば、活力や多様性が奪われる可能性がある」

 −採点する企業は「点数の低い人への不利益はない」と説明する。

 「組織に属さず働くフリーランスなどの働き手に仕事を紹介するクラウドソーシングの会社がスコアを受け取り、高得点の人に優先的に仕事を回すという。結果として得点が低い人には不利になる。点数の低い人が、民泊など信用力を背景にした取引から自動的に排除され、彼らが仮想空間で身を寄せ合う『バーチャルスラム(仮想貧困)』が生まれる恐れがある」

 −スコアに限らず、グーグルなど巨大IT企業も含めて人がデータに追跡される世の中になりつつあるが、求められる対応は。

 「個人が、つくられたデータ上の分身(データ・ダブル)をコントロールできることが重要だ。自己の情報やデータに対する権利は個人の尊厳のためにも重要で、憲法レベルでしっかり議論すべきだ。欧州は個人の尊厳に対する意識が高いため、世界に先駆けて一般データ保護規制を施行し、データが個人の意に反して利用されないよう規制している」

<やまもと・たつひこ> 1999年慶応大卒、同大グローバルリサーチインスティテュート(KGRI)副所長。編著書に『AIと憲法』など。

 

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