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【経済】

副業労働時間「通算せず」 厚労省案 上限規制、骨抜きの恐れ

 厚生労働省は八日、副業・兼業を推進するために労働政策審議会に諮る「副業・兼業の労働時間管理に関する報告書」を公表した。九月以降、労政審の労働条件分科会で議論される。

 報告書は先月下旬に専門家会合がまとめた。今後の方向性として、労働基準法第三八条が定める「複数職場での労働時間は通算する」との規定を改め、労働時間の上限規制や時間外労働の割増賃金について「複数職場の労働時間は通算せず、事業主ごとに管理する」ことを選択肢とした。

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 厚生労働省が労働政策審議会に諮る副業・兼業の労働時間管理についての報告書は、働き方改革関連法で定めた時間外労働の上限規制を骨抜きにしかねないものだ。

 「複数職場の労働時間を通算せず」、事業主ごとに上限規制を適用することになれば、二つの職場で過労死ラインを超える長時間労働をさせることも可能になる。やみくもに副業を推進しようという姿勢は、働き方改革に逆行するだろう。

 まずは副業・兼業の現状をみつめるべきだ。「複数就業者についての実態調査」(労働政策研究・研修機構調べ)によると、副業や兼業をする理由で最も多いのは「収入を増やしたいから」(36・5%)、次いで「一つの仕事だけでは収入が少なくて生活自体ができないから」(27・7%)だった。

 また、副業をしている人の三分の二は、本業の所得が二百九十九万円以下である(総務省の「平成二十九年度就業構造基本調査」)。要するに生活を維持するためにダブルワークなどで働かざるを得ない人が多く、長時間労働になりがちということだ。

 報告書が選択肢として示した、事業主ごとの上限規制や割増賃金支払いを認めることになれば、さらなる長時間労働を助長するのではないか。あるいは本業と副業を使い分けて長時間労働をさせるなど企業による悪用もはびこる可能性もあるだろう。

 連合や日本労働弁護団は、労働者の健康確保という労働基準法の目的を反故(ほご)にするものとして強い懸念を示している。政府がやるべきは副業の推進ではなく、労働者が本業だけでも暮らしていけるような労働政策であり、経済政策ではないだろうか。 (編集委員・久原穏)

 

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