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【経済】

ポイント還元狙い、資本金減ラッシュ 小売業、自ら中小企業化

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 十月一日からの消費税率引き上げを前に、小売業が資本金を五千万円以下に減らして「中小企業」になる事例が続出している。キャッシュレス決済のポイント還元制度に参加し、国からの支援を受けて集客する狙いとみられる。キャッシュレス社会の実現を急ぐ政府の政策が、「企業の格」とされる資本金を落としてまで客を集めようとする小売業者を生み出すゆがみを生んでいる。 (嶋村光希子)

 政府は消費税増税に伴う消費の落ち込みを防ぎつつキャッシュレス決済も普及させようと、来年六月までキャッシュレス決済時に5%のポイントを還元する。中小企業の売り上げの落ち込み緩和も兼ね、実施するのは「資本金五千万円以下または従業員五十人以下」の中小店舗に限る。決済に必要な端末の補助金も負担が実質ゼロになる形で受けられる。

 帝国データバンクのまとめでは、資本金を減らす「減資」が確認された小売企業は、二〇一八年一〜七月は二百五十二件だったのに対し、一九年の同期は四百十二件と大幅に伸びた。全企業に占める割合は13・7%で〇八年の7・9%(年間)から大きく膨らんだ。

 減資は一般的には赤字が続き損失が累積した場合などに資本金を取り崩して埋め合わせるために行われる。だが、ここへきて増えている理由について東京支社情報部の赤間裕弥部長は「企業がポイント還元に参加することで、顧客の取り込みを図ろうとしている」と分析する。

 七月には神奈川県のスーパーが一億円から五千万円に減資。三月には埼玉県の百貨店も一億円から五千万円に減資している。いずれの社も本紙の取材に「(減資は)今後の資本政策の柔軟性や機動性を確保するため」などと明言は避けた。ただ、ポイント還元への消費者の期待は高く、消費生活アドバイザーの和田由貴さん(46)は「ポイントをためている人は多く、還元があるかないかで店を選ぶ人も増えるだろう」と指摘する。

 ポイント還元の原資は国民の税金で、本年度だけで二千八百億円の予算が組まれている。本来は中小企業に該当しないはずの体力のある企業までが減資という帳簿上の操作で恩恵を受けるなら、税金投入の正当性に疑問が生じるのは必至だ。

 世耕弘成経済産業相は六月、「期間終了後、再度増資するというケースがみられた場合には申請時点にさかのぼって対象外としたい」と言及。経済産業省キャッシュレス推進室によると、制度適用だけのための減資だと明らかになった場合は返還請求するとしている。

<減資> 株主が払い込んだお金である資本金を減らす手続きのこと。赤字が続いて損失がたまった場合に資本金を取り崩して埋め合わせるために行われるのが普通。ただ、中小企業向けの優遇税制を狙った節税のために減資する例もみられる。

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