東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 経済 > 紙面から > 9月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【経済】

働き方で税負担差 解消を 政府税調答申 老後資産の支援提言

写真

 政府税制調査会(首相の諮問機関)は二十六日に総会を開き、中期的な税制の在り方に関する答申をまとめた。フリーランスの増加を踏まえ、老後の資産形成に向けて働き方によって受益に差が生まれない公平な税制を構築し、多様な就業を支えるよう提言した。深刻化する格差の是正に向けて所得の再分配機能を強化することや、借金に頼らず社会保障を維持するための税収基盤の確保も求めた。

 政府税調が中期答申を出すのは二〇一二年の第二次安倍政権発足後に有識者主導で再始動してからは初めて。令和への改元後としても初の答申となり、政府、与党に新しい時代に即した税制の設計を求めた。

 現在の税制は働き手の減少で、社会保障制度などの財源を調達する機能を「十分に果たせていない」と問題提起し、歳出と歳入両面での改革を求めた。十月に税率が10%に上がる消費税は重要性を指摘しつつ、一段の増税には言及しなかった。

 答申では、老後に向けて活用できる資産形成の制度が、サラリーマンが受け取る企業年金など働き方によって異なる現状に触れ、税制面の優遇を公平に受けられる措置を検討する必要があるとした。投資や貯蓄を後押しする仕組みは、少額投資非課税制度(NISA)などいくつもあるため、制度の簡素化を求めた。

 また、高齢者に資産が偏っている現状を踏まえ、相続税や贈与税を一体的に見直して若い世代への資産移転を促すことを提言。富裕層への優遇と指摘される株式の譲渡益などへの課税は「負担の公平感や所得再分配への配慮から、総合的に検討するべきだ」とした。

◆企業型年金 個人型より手厚く

 政府税調は、老後の生活費を補うため公的年金に上乗せする「私的年金」の税制で、働き方の違いによって税負担に差が生まれないように見直しを求めました。私的年金の現状と課題を整理します。

 Q 私的年金とは何?

 A 国民に加入を義務付けている国民年金や厚生年金という「公的年金」とは別に、企業や個人が任意で加入する年金です。民間の金融機関などが運営しており、掛け金を負担する主体によって「企業型」と「個人型」に分かれます。中でも将来の受給額が金融商品の運用結果によって変わる「確定拠出年金」が人気で、個人が加入するタイプは「iDeCo(イデコ)」と呼ばれます。自営業やフリーランスなど企業型に加入できない人も入れます。

 Q 私的年金をめぐる税制はどんな仕組みですか。

 A 企業や個人が加入すると、法人税や所得税の優遇が受けられます。金融庁が二千万円の老後資金を個人がためる必要があるという報告書案をまとめたように、政府は個人に私的年金の活用を促しているからです。具体的には、法人税や所得税は、収益から費用を差し引いた「所得」にかかりますが、掛け金はすべて費用として計算できるため、所得が減り、納める税金も少なくなります。

 Q 課題はありますか。

 A 自営業者らが加入する個人型よりも、会社員らの企業型のほうが手厚いという差があります。企業型の一つで、将来の受取額が決まっている「確定給付年金」は、企業が上限なく掛け金を負担する上、全額を費用に計上できます。一方、個人型の確定拠出年金は掛け金に上限があり、所得税を計算する際に収益から一定額しか差し引けません。その結果、個人型の加入者は、確定給付年金に加入する会社員より税の負担感が大きくなります。

 Q 政府税調はどう変えようとしているのですか。

 A 答申は、政府が進めるフリーランスや非正規雇用など働き方の変化も踏まえ、「老後の生活に備えるための準備を公平に支援する税制」を掲げました。国民が私的年金の掛け金を一律に税金から差し引く英国の例も挙げ、職業によって税優遇に差が生じないよう配慮を求めています。ただ、企業年金に詳しい帝京大の上田憲一郎教授は「(英国のように)共通の非課税枠を設けるには、年金を運用するルールの整備が必要で、すぐに非課税枠を導入するのは難しいと思う」と指摘しています。 (大島宏一郎)

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報