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【経済】

<働き方改革の死角>パワハラ むしろ加速? 規制法 厚労省の指針素案

 職場でのパワハラやセクハラを防止するための女性活躍・ハラスメント規制法の施行に向けて厚生労働省が作成した指針素案に、労働者や専門家から疑問の声が噴出している。「経営上の理由」などがあれば、強い注意や能力に見合わない仕事をさせることを容認する上、そうした行為が許される前提条件もあいまいなためだ。日本労働弁護団は「上司の暴言やパワハラにお墨付きをあたえる」との緊急声明を公表。人権団体や労働組合は二十九日、抜本修正を求めて緊急集会を開く。 (池尾伸一)

 厚労省はパワハラを「暴力」「暴言・精神的攻撃」に加え、「隔離(人間関係からの切り離し)」「過大な要求」「過小な要求」「プライバシーの侵害」の六つに分類。それぞれに問題例と問題にならない例を盛り込んだ指針案を、二十一日の審議会に示した。

 例えば「過小な要求」では、管理職である労働者を退職させるために、誰でもできる仕事をさせることはパワハラだと指摘。一方で「経営上の理由で一時的に能力に見合わない簡易な仕事を行わせる」のは、パワハラに当たらないとした。

 これに対しブラック企業相手の訴訟を多く手掛けてきた市橋耕太弁護士は「社員を追い出し部屋などで簡単な作業をさせて退職に追い込もうとする企業は、いつも『経営上の理由による一時的な措置』と主張してきた。指針は企業の常套句(じょうとうく)を正当化することになりかねない」と懸念する。

 実際、ある大手引っ越し会社は、労働組合に加入した営業担当の社員を一日中、書類をシュレッダーにかける仕事に異動させた際、「経営上の理由」だと一貫して主張した。また指針案は強制的に個室で仕事をさせることも「処分を受けた労働者」に対してなら、容認する姿勢を打ち出した。

 「暴言・精神的攻撃」についても「社会的ルール」を欠いた労働者に「強く注意」することは問題ないとした。市橋氏は「社会的ルールの範囲や『強く注意』の程度が不明確だ。労働者に落ち度があるなら暴言を吐いても許されるとの誤解を企業に与える」と言う。

 「問題にならない例」は、もともと「適切な指導とパワハラの区別がつきにくい」とする経団連などが明記を要求した経緯がある。だが、ブラック企業被害対策弁護団代表の佐々木亮弁護士は「厚労省の例は状況が細かく書かれておらず、幅のある解釈が可能。このままでは企業による責任逃れの弁解に悪用され、パワハラ防止どころかパワハラ促進になってしまう」と指摘、「問題にならない例の記載は不要」と話す。

<女性活躍・ハラスメント規制法> パワハラを就業規則で禁止することや相談窓口の設置を企業に義務付け、指導しても対策を講じなかった企業名は公表する法律。大企業は2020年6月1日から、中小企業は22年4月1日から義務化する。内容は企業に防止措置を設けることを求めるにとどまっており、職場でのハラスメント全般の法律による禁止を求める国際労働機関(ILO)条約の基準より緩い。

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