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【経済】

国産巨大IT 課題山積 ヤフー・LINE来年統合 個人情報集積に不安

 無料通信アプリ大手LINE(ライン)とヤフーの経営統合により、利用者延べ1億人規模の国内最大級のIT企業となる。しかし、グーグルやアップルなど海外勢との差は大きく開いているほか、膨大な個人データを掌握する巨大IT企業への反発と規制強化が世界的に進んでおり、「国産巨大IT」の船出に逆風も吹く。 (岸本拓也)

 「米国系、中国系のテクノロジー企業との差は桁違い。差が開くことに危機感があった」。Zホールディングス(HD)の川辺健太郎社長とLINEの出沢剛社長は十八日、東京都内で記者会見を開き、統合を決断した理由を説明し、今春から提携に向けた協議を始めたことも明らかにした。

 競争相手として念頭にあるのは、デジタル市場で圧倒的な支配力を持つ、グーグルなど「GAFA」と呼ばれる米巨大IT企業と、近年台頭してきたアリババグループなどの中国IT企業だ。

 日本でも、GAFAのサービスは広く浸透しており、川辺氏は「国産プラットフォーム(基盤)を選択肢として提供したい」と強調。防災や減災など、日本固有の課題解決につながるITサービスを強化して対抗する考えを示した。

 両社は統合で、多くの人が利用するLINEアプリを通じてヤフーのネット通販などに誘導することで、利用者を増やす相乗効果も狙う。しかし、両社はスマホ決済や金融など重複も多い。エース経済研究所の安田秀樹氏は「(システムなどの)バックボーンを含めた統合が必要」と指摘する。

 将来は、アジアなどにも本格進出を目指す。

 時価総額ではZHDとLINEを足しても、米中IT勢との差は数十倍あり、その背中は遠い。

 一方、両社の統合は、利用者にとっては「両刃(もろは)の剣(つるぎ)」だ。両社はネットやアプリの利用履歴をもとに集めた個人データに基づきその人の好みにあった商品やサービスを提案する戦略とみられる。

 個人にとってはどこでそのような自分の情報が使われているか見えないことへの不安は根強い。実際、最近も就職サイトのデータを使って予測した内定辞退率を外部に販売していた企業の例が問題になった。

 統合後の巨大グループは、LINEによるプライベートな交信記録や、ヤフーの検索記録など、個人情報の極みのようなデータまで取り扱うことになる。それだけに、利用者が安心して使えるサービスを提供する責任がある。

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◆公取委 寡占審査へ

 ヤフーとLINEの経営統合に関し、公正取引委員会は独禁法に基づく企業結合審査を行う。特定の市場で寡占が生じ、競争が停滞するのを防ぐためだ。事業領域が多岐にわたる「プラットフォーマー」と呼ばれるIT大手同士の審査は国内で異例な上、今後のモデルケースとなるため、公取委は慎重に判断する構えとみられる。

 プラットフォーマーによる統合は一般的な企業と違い、寡占が進みやすいとされる。検索サイトや会員制交流サイト(SNS)などの無料サービスの会員が増えれば増えるほど、付随する広告の価値が高まったり、さらなる利用者の増加につながったりするためだ。

 公取委はプラットフォーマーによる結合審査の指針改定を進めてきた。新指針では寡占状態かどうかを判断する際に、経営統合や買収後に市場で占める売上高や販売数量などのシェアに加えて、個人情報や購買記録、位置情報などのデータの保有状況も考慮する方針だ。

 今回のケースでは、インターネット通販やスマートフォン決済など、両社が手掛ける事業分野の統合後の競争状況を見極める。公取委関係者は「幅広い分野にまたがっており、前例がない規模だ」と戸惑いを見せた。

 

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