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【経済】

<働き方改革の死角>巨大ITに「個」苦戦 ウーバーイーツ配達員 団交門前払い

面会を拒まれた後、記者の質問に答えるウーバーイーツユニオンの前葉富雄執行委員長(右から2人目)=5日、東京都渋谷区で(隈崎稔樹撮影)

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 「プラットフォーマー」と呼ばれる巨大IT企業で個人事業主などの立場で働く人たちが、報酬引き下げなどに対抗するため組合を結成する動きが広がってきた。しかし、「雇用関係がない」との理由で交渉をはねつけられるケースが大半。政府の個人の働き手保護への腰も重く、圧倒的な力を持つ「巨人」の前に苦戦している。  (岸本拓也)

 「会社の許可がないのでお通しできません」。米配車大手ウーバー・テクノロジーズの日本法人が入る東京都渋谷区のビル。同社が運営する食品宅配代行サービス「ウーバーイーツ」配達員でつくる労働組合メンバーらが五日、訪れると、受付担当者は淡々と答えた。

 「上司はAI。組合をつくってもまだ人間とは一度も会えたことがない」と、組合執行委員長の前葉(まえば)富雄さん(29)が憤慨する。

 配達員はウーバーのアプリを通じ飲食店の料理を家庭やオフィスに配達、距離などに応じウーバーから報酬を受け取る。先月下旬に突然報酬を大幅に下げたのは不当として抗議しに来たが、今回も面会できなかった。

 配達員はウーバーの社員ではなく「個人事業主」として業務を請け負う。けがをしても労災が下りないなど厳しい待遇を改善するため十月に労組を結成。団体交渉を求めて、三度にわたりウーバー側に要望書を提出してきたが、ウーバーは毎回拒否。「ご意見はアプリでご連絡を」との回答書を送ってきただけだ。

 団体交渉権が法律で保障される労働者なら、交渉に応じる義務があるが、個人事業主には「交渉に応じる義務はない」というのがウーバー側の主張。だが、配達員男性(47)は「配達場所や報酬の条件は全部ウーバーが決めており、われわれはウーバーの指示で働く事実上の『労働者』だ」と指摘。組合は今後、紛争解決機関である労働委員会にウーバーに団交に応じる命令を出すよう申し入れる。

 ウーバー側は「配達パートナーの皆さまは、労働組合法上『雇用する労働者』に該当しないため、団体交渉はお断りする。全てのご意見を歓迎し、よりよいサービスを提供する」とする。

 巨大通販サイト「楽天市場」を運営する楽天にも、出店者が声を上げ始めた。きっかけは、商品価格が三千九百八十円以上の場合は送料を来春から一律無料(沖縄などを除く)にし、送料は「出店者持ち」としたこと。出店者らは任意団体「楽天ユニオン」を結成し、撤回を求めて団交を迫る方針だ。「楽天の数々の強権的な対応が許せないという声が高まっている」。設立者の勝又勇輝さん(32)は言うが、楽天側が交渉に応じるかは不透明だ。

 フランスで二〇一六年にウーバーなど巨大IT企業傘下の個人事業主に団体交渉権を認める法律が成立するなどの動きが広がりつつある中、日本政府は働き手の苦戦を傍観するばかり。日本労働弁護団の棗(なつめ)一郎弁護士は「巨大IT傘下の働き手を守る世界の潮流に取り残される」と警告する。

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