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【経済】

ベルリン、家賃上げ禁止法案 「社会主義に逆戻り」賛否

ベルリンで入居者募集の広告が掲げられているマンション

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 ドイツの首都ベルリン市政府が取りまとめた民間賃貸住宅の家賃値上げ禁止法案が、波紋を呼んでいる。十年で二倍以上に高騰した家賃に苦しむ住民は歓迎するが、行政の介入に不動産業者らは「社会主義に逆戻りだ」と反発。保守系議員は、憲法裁判所に提訴する方針を示している。法案は先月末に議会に提出され、近く審議が始まる見通しだ。 (ベルリン・近藤晶、写真も)

■デモも頻発

 「共働きだから何とか払っているが正直苦しい。家主や管理会社は金もうけしか考えていない」

 タクシー運転手の夫とベルリンのアパートに住む警備員のガリナ・ファイストさん(61)は憤る。当初は月四百ユーロ(約四万八千円)だった家賃は毎年二十〜三十ユーロのペースで値上がりし、今は六百八十ユーロ。エレベーターが故障しても管理会社は放置したままという。

 ベルリンでは人口約三百七十五万の八割が賃貸住宅に住んでいる。欧州有数の大都市だが、かつてはロンドンやパリに比べて家賃は割安だった。だが内務・建設省によると、二〇一八年の平均家賃は一平方メートルあたり一一・〇九ユーロで、十年で二倍以上に跳ね上がった。

 背景には、十年間に人口が約四十万人増加し、手ごろな賃貸物件が不足していることがある。さらに低金利を背景に、高級物件に投資マネーが流入。全体の家賃相場を引き上げたとみられている。近年、家賃高騰に反発するデモも頻発している。

 大学で公共政策を学ぶナタリア・メヒアさん(26)は運良く学生寮に入居することができたが、「ベルリンで学生が払える家賃のアパートを見つけるのは至難の業。家賃の値上げ制限は、いいことだと思う」と法案を支持する。同居していたカップルが別れることを決めた後も、互いに引っ越し先が見つからず、そのまま一緒に住み続けるケースもあるという。

■違反すれば罰金も

 法案は、一四年以前に建てられた約百五十万戸を対象に、今年六月十八日時点の契約にさかのぼって五年間は家賃の値上げを禁止。月家賃も一平方メートル当たり九・八ユーロを上限とする内容だ。違反すると最大五十万ユーロの罰金が科される。物価上昇率に応じた年1・3%までの値上げも二二年以降に制限し、既存の家賃が上限を20%以上、上回っている場合、借り主は家主に値下げを要求できる。

 ベルリン市政は社会民主党(SPD)、左派党、緑の党による左派連立政権。SPDのミュラー市長は家賃高騰を止めるには法案は「適切で正しい」対策だと強調する。一方、独不動産協会のユルゲン・ミハエル・シック会長は「社会主義時代の住宅政策に戻ろうとしている」と批判。保守系議員らは、議会で承認されても、憲法裁判所の判断が必要だとして提訴する方針だ。

 住宅投資でもうけられなくなれば投資が手控えられ、かえって住宅の供給が減る恐れも懸念される。賃貸物件の入居者が会員となっているベルリン賃借人協会のウィブケ・ウェアナー副会長は「家賃の高騰が続けば、追い出される人が出てくる恐れがある。ただ法律だけでは不十分。ベルリンは公営住宅が少なく、市は具体的な整備計画を示す必要がある」と指摘する。

 

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