東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 経済 > 紙面から > 12月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【経済】

疑惑答えぬ政府の「改正」 三木義一・青山学院大学長

写真

 不思議な国だ。一国の与党が税制改革案を示すなら、その前に税の使途の公正性と透明性についての信頼を得ておかねばならないはずだ。しかし、与党は税金の使い方が問題視されている「桜を見る会」についての疑惑を放置したまま、税制改正大綱を提示した。

 ばかにされている国民の一人として、改正内容を概観しておこう。

 まず、昨年来の課題であった寡婦(夫)控除適用範囲の拡大、つまり未婚のひとり親への適用は、ようやく可能となった。ただ、寡婦の要件に合計所得金額五百万円以下が加わった。法律婚主義を徹底してきた我が国の税制をこの機会に見直すべきかもしれない。

 次に、ソフトバンクグループの「節税」で問題となった親子会社間の不透明な帳簿操作が封じられた。法人が子会社株式を取得した後に、子会社から配当を非課税で受け、配当で価値が落ちた子会社株式を譲渡することで譲渡損を計上する手法だ。子会社から配当を受けた場合には子会社の帳簿価額を引き下げることになったからだ。

 ただ、企業グループを一体として利益と損失を合算する「連結納税制度」は、グループ内の各法人を納税単位とする「グループ通算制度」に移行する。事業再編時の税負担を和らげて後押しするためだが、新たな租税回避も生じてくることになろう。

 地方税では、所有者不明の土地の増加に対応して、使用者を所有者と見なして課税できる要件を大幅に緩和するとともに(従来は災害の場合のみ)、登記簿に所有者として登記等がされている者が死亡している場合に、現にその土地を所有している者に申告させる制度も導入された。

 国外取引については、国外財産調書の申告漏れに対する加算税加重、外国税務当局への情報公開の要請があった場合には、その要請から三年間は更正処分が可能になった。

 外国人労働者の増加に伴い国外に住む家族への扶養控除の乱用が懸念され、二〇一五年度から種々の改正がなされてきたが、今回も対象となる親族の要件をさらに厳格化した。

 高額な国外中古建物を購入し、賃貸したうえで、簡便法で減価償却費を計上すると、不動産所得が大きなマイナスになる。これと国内所得を通算する租税回避も横行していたが、規制されることになった。

 全体に小粒とはいえ、いずれも必要性のある改正と言えよう。だが、しっくりこないのは、税を公正に使ったことを証明できない人たちが税制を「改正」するという不条理が潜んでいるからである。 (寄稿)

<みき・よしかず> 中央大法学部卒。一橋大大学院法学研究科修士課程修了。立命館大教授などを経て2010年、青山学院大法学部教授。15年12月から現職。東京都出身。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報