東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 経済 > 紙面から > 1月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【経済】

首都高の追加工事 膨らむ改修予算 工費、再び5000億円規模も

撤去が決まった首都高江戸橋ジャンクションの連絡道路(手前)=東京都中央区で

写真

 たくさんのものを速く運ぶ効率輸送による成長から、持続可能な開発へ−。銀座の自動車道路跡を空中公園に生まれ変わらせる計画は、時代の流れに沿う。一方、その計画の前提となったのは首都高速道路の追加工事だ。日本橋区間の地下化と合わせると工費は五千億円規模に膨らむ可能性もある。 (皆川剛)

 巨大な鋼の橋がカーブを描いて日本橋川の上に延びる。首都高江戸橋ジャンクション(東京都中央区)の都心環状線(都環)連絡道路。この百メートルほどの道の撤去を決めたことが、二キロ離れた銀座に再開発の話をもたらした。

 江戸橋は複数の路線の合流部に当たり、連絡道路を通って汐留方面へ向かう約九千台と東の箱崎方面へ向かう約四万台(ともに一日平均)で渋滞が慢性化している。このうちの九千台を新たに銀座の地下に設けるトンネルに逃がす計画だ。

 日本橋の地下化工事に併せて実施する方針。「江戸橋の渋滞解消の優先度は高い。渡りに船だった」と首都高の担当者は話す。

 ただ、日本橋区間の地下化では、当初国などが五千億円と見積もった工費に批判があり、三千二百億円に圧縮した経緯がある。地下トンネルを銀座にも造れば、工費は再び五千億円規模に膨らむ可能性もある。

 そもそも都環を利用する車の六割が都心に用のない通過車とされ、国土交通省と首都高は都環の外に別の環状線を整備して車の流入を減らすことで、渋滞解消を図ってきた。

 同省の調査では、二〇一五年にそのうちの一つである中央環状線が全通すると、渋滞で余分にかかった通行時間が都心で半分になった。同線は連絡道路の追加工事を続け、昨年十二月の小松川ジャンクション(江戸川区)の開通で、計画した整備を終えたばかりだ。

 九千台の交通のために、さらに都心で大規模工事を行う必要はあるのか。国交省の田村央・道路経済調査室長は「災害時の道路確保のためにも首都高の機能強化は必要で、二重投資ではない。観光需要が増える中、大型バスの通行を円滑にする意義もある」と語る。

 一方で現在、車を取り巻く環境は大きく変わろうとしている。

 「MaaS(マース)」と呼ばれる新時代サービスがそれだ。複数の公共交通機関を組み合わせた利用を割引などで促し、人々はマイカーを持たず必要なら相乗りする。そんな青写真を同じ国交省が描いている。

 自動車需要は大幅に減るとの予測もある。「首都高全体の更新計画の議論を深めないまま、部分的な判断で地下化を進めるのは危険だ」と、根本祐二・東洋大教授(公共政策)は指摘する。

 高度成長期に張り巡らせた道路網を維持すべきか、減らしていくべきか。東京五輪後の道路政策は大きな分岐点を迎える。将来を読み違えた場合、重い維持費のツケは国民が払う。

◆世界各地で廃線など活用

貨物鉄道の枕木やレールの一部をそのまま生かしたハイライン=米ニューヨークで(赤川肇撮影)

写真

 公共交通機関の高架の跡地を公園に整備する例は、世界の都市でみられる。大量輸送重視を脱して、環境に負荷をかけない開発を目指す意思を示したとして国際的に評価を得ている。

 先駆けとなったのは、国鉄の廃線を再開発して一九八八年に完成したパリの「クレ・ベール・ルネ・デュモン」。四・五キロの遊歩道にライムやヘーゼルナッツの木を植え、人工の川がせせらぐ。高架下には、ブティックが軒を連ねる。

 二〇〇九年に供用が始まったニューヨークの貨物鉄道跡「ハイライン」(二・三キロ)には一日六万人が訪れる。高速道路跡を再開発した例に、一七年開業のソウルの「ソウル路(ろ)7017」(一キロ)がある。

 東京都中央区は昨年、KK線の廃止を見越して空中公園の整備案を小池百合子都知事に提案。国際都市間の競争に関心の高い知事は前向きな姿勢を示した。地元や関係企業にも反対の声はない。一方、「知事が計画を発表して手柄になることを嫌う自民党に配慮する必要がある」(関係者)。七月の都知事選に向けた政治的な動きをにらみながらの検討となりそうだ。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報