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【経済】

「フィンランドが検討」は誤報だったけど… 週休3日は夢物語か

昨年12月、新内閣発足に当たり、記者会見するマリーン首相(右から2人目)ら女性閣僚=ロイター・共同

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 フィンランドのマリーン首相が「週休三日・一日六時間労働制」導入を検討するとの一報。欧州メディア発で六日に飛び込んできたが、これがなんと誤報。先月、世界最年少三十四歳で女性首相となったマリーン氏の就任前の発言が独り歩きしたようだ。ただ、実現すれば世界の働き方に影響のある話。可能性はゼロなのか。 (稲垣太郎)

◆大使館が異例のツイート

 「フィンランドが週休三日、一日六時間労働を検討しているという話がメディアで報道されているけれど、それは新政権と首相が所属している党の目標にもないし、計画もないんだ」。七日午後五時半ごろ、「駐日フィンランド大使館」公式アカウント名でツイッターに異例の投稿があった。

 発端は、欧州メディアが六日、マリーン首相の「家族や趣味などにもっと時間を費やすべきだ」などの発言を紹介し、週休三日や一日六時間労働制を検討していると報道したこと。これが各国で後追いされ、日本でも時事通信などが報じた。だが、フィンランド政府は七日、「政府の議題にもなっていない」と否定する声明を発表。一転して誤報となった。先のツイッター投稿は「誤ったニュースを止めたかった」(大使館広報部)からだという。

◆34歳新首相への期待から?

 フィンランドの政治と社会政策が専門の柴山由理子・東海大講師によると、マリーン氏は昨年八月に、所属する社会民主党の記念イベントで、「ある人たちには十分な所得を得た状態で週四日、六時間労働を実現することはユートピアで不可能に聞こえるかもしれない」などと発言。どうやらこれが元ネタになり、約半年後の誤報につながった。

 柴山氏は「フィンランドはヨーロッパの大国ではなく、フィンランド語の壁もあり情報量が多くない。その一方、IT先進国で、若くて女性の新首相なら先進的な取り組みをするのではないかという期待があったのかもしれない」と誤報の背景を推測する。

 ただ、週休三日制自体は、あながちユートピア的な夢想というわけではない。

◆「創造性向上」「非現実的」

 日本マイクロソフトは昨年八月一カ月間、週勤四日と週休三日を柱とする働き方改革のプロジェクトを行い、前年同月比で就業日数を25・4%減少させたなどの成果を発表した。従業員の94%から評価するとの声が上がったという。昨年十二月からは第二弾のプロジェクトを行っている。コーポレートコミュニケーション本部の金沢聖訓氏は「週休三日が狙いではなく、業務の効率化と創造性の向上のため」と説明する。

 一方、英BBC放送(電子版)は、英国の野党・労働党がまとめた報告書で、週四日勤務は「非現実的」との結論を出しており、中国ネット通信大手アリババ集団の創業者の馬雲(通称ジャック・マー)前会長は昨年四月、午前九時から午後九時まで週六日働く「996システム」を提唱したと伝えている。

◆労組も賃上げ要求ばかり…時短進まない日本

 さて、もう何十年も働き過ぎが指摘されている日本。週休三日・一日六時間労働制の可能性はあるか。龍谷大の脇田滋名誉教授(労働法)は「過労死が問題になっている現在の日本では夢物語だ」とにべもない。

 日本の労働組合は、これまで賃上げは要求しても、労働時間短縮に本気で取り組んでこなかった。「労働者を増やさず、一人の労働者を長時間働かせるという考え方が労使にある」

 背景には、労働時間が減ればそれだけ賃金を切り下げられるという懸念があり、現在、政府が旗振りする働き方改革でも、賃下げの方便に使われるとの見方がある。「欧州ではワークシェアなど時短の取り組みが進んでいるが、日本は何周も遅れている。時短にも目を向けるべきだ」

 

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