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【経済】

楽天送料無料 差し止めを 出店者団体が請求「赤字増えるだけ」

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 楽天が通販サイト「楽天市場」で三月中旬に実施する一定額以上の商品の送料無料化に対し、送料負担を強いられる出店者でつくる団体が二十二日、公正取引委員会に、無料化の差し止めを求める排除措置命令を楽天に出すよう請求した。公取委は楽天の対応が独占禁止法が禁止する「優越的地位の乱用」に当たるのか、本格調査に乗り出す。

 請求したのは三百以上の出店者が加入する任意団体「楽天ユニオン」。

 楽天は昨年十二月、税込み三千九百八十円(沖縄・離島は九千八百円)以上の購入で送料を一律無料とする施策を、今年三月十八日から始めると各出店者に通知。送料の負担は全て出店者側に負わせることから、出店者らが反発していた。

 楽天ユニオンの勝又勇輝代表は「一方的に規約が変更され、出店者に負担が押しつけられており、納得できない」と話した。

 楽天ユニオンは、出店者がスマートフォン決済「楽天ペイ」を使うよう強制されている結果、手数料負担が増えていることや、違約金についても「悪質でないのに支払わされるケースががある」と問題視。公取委に対して、これらの慣行も調査するよう求めている。延べ約四千筆の出店者の署名も提出した。

 公取委の菅久修一事務総長は二十二日の定例記者会見で「一般論として、(通販サイトの)運営業者が、出店者に対して地位が優越していて、(出店者に)不当に不利益を与えるようなやり方で取引条件を変更する場合、優越的地位の乱用に当たる可能性はある」と指摘、今後事実関係を調査するとみられる。

 一方、楽天は「送料無料化で分かりやすさを向上させることで出店者の売り上げ増加につながる。引き続き出店者の理解を得る努力を続けていく」とコメントした。

◆巨大ITの強制 渦巻く懸念・怒り 

記者会見する楽天ユニオンの勝又勇輝代表。「一方的に規約が変更され、出店者に負担が押しつけられている」と訴えた=22日、東京都千代田区で

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 楽天の送料無料化を巡り、公正取引委員会が独占禁止法に基づく調査に乗り出すことになった。きっかけは、送料の負担を強いられる出店者たちの怒りの声。通販サイトなどを運営する「プラットフォーマー」と呼ばれる巨大IT企業に対する監視・規制が強まる中、公取委の判断が注目される。

 「赤字が増えるだけで仕事として成り立たない。送料無料は『ただ働き』と同じだ」。楽天市場の出店者でつくる「楽天ユニオン」のメンバーの男性は憤る。

 三千九百八十円以上の買い物で送料を原則無料とする楽天の対応は、消費者に恩恵がある一方、送料を負担する出店者はその分利益を削られる。

 この男性のケースでは、送料のほか倉庫費用などで出荷一件あたり約千六百円の費用がかかっている。現在、男性は一万一千円以上の場合、送料を自主的に無料にしているため、一万一千円分以上の買い物をする顧客が多い。「三千九百八十円以上は送料無料化」となると、細切れに買い物する人が増えるのは必至。「客単価が落ち、赤字に転落してしまう」と懸念を深めている。

 楽天は、送料無料にして販売価格を分かりやすくすることで集客力が高まり、15%程度売り上げが伸びると出店者に説明する。しかし、ユニオンの試算では、売り上げが伸びても送料負担によって、利益は約二割減るという。

 値上げも難しい。「送料無料」を掲げながら、商品価格に送料分を上乗せすると、「不当表示」として景品表示法(優良誤認)に抵触する恐れがあるためだ。

 ユニオンの顧問を務める川上資人(よしひと)弁護士は「楽天は取引増で手数料収入が増えるが、出店者の利益は減る。不利益を店舗に押しつける優越的地位の乱用に当たる」と指摘する。

 公取委は昨年、ネット通販企業が手数料引き上げなどを一方的に取引先に押しつければ、独禁法違反(優越的地位の乱用)になる可能性があるとの見解を示したばかりだ。

 政府も、立場の弱い取引先企業を守るため、楽天のような巨大IT企業を対象に、取引先への一方的な契約条件の変更などを禁じる法案を通常国会に提出する。

 楽天は、独自の物流網を構築するアマゾンが有料会員向けや、購入額二千円以上で送料を無料にして販売を伸ばしていることに危機感を持っており、対抗策の送料無料化を急ぎたい考えだ。しかし、巨大IT企業への規制が強まる中、無料化を強行すれば、批判は避けられない情勢にある。 (岸本拓也)

 

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