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【NIE】

<学校と新聞>大震災に学ぶ 正しい情報、なくては困る

手書きで発行された「石巻日日新聞」の複製を作り、児童と被災地の状況を考えた=東京都北区で

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 東日本大震災から八年、テレビの特別番組を見ていて、大震災八カ月後に取り組んだ授業を思い出しました。震災を教材化しようとする動きは、数カ月たっても、私の知る限りありませんでした。「まだ事実や方向性が定まっていない」との理由からでした。

 「私が担任だったら、やる。それが教師の使命だ」などと、職場の先生たちと被災地のお酒を酌み交わしながら語っていた時、「私やります」と手を挙げたのが、教員二年目の女性。「誰も実践していない授業をつくるのは大変だぞ」と少々おどかしましたが、彼女の決意は変わりません。何度かダメ出しもしましたが、彼女は諦めません。

 小学校五年社会科の情報産業一時間目の授業です。まず、前日の新聞のテレビ欄のコピーを配りました。子供たちは「いろいろな番組がある」「子供向け、大人向けの番組もある」などと発表。次に、日付を言わずに別の日のテレビ欄を配る。すると、「何これ?」「すき間だらけだ」。少し時間をおいて、「大震災の二日後の新聞だ」「ほとんどが震災の番組だ」「あの時は被害の様子が次々と伝えられていた」「コマーシャルは確かAC…」など、記憶が噴き出します。

 そこで先生が一言。「みんなはテレビを見てたね。でも、そのとき被災地の皆さんはどうだったのかな」と。一瞬、教室が静まり、その後、一人がつぶやきました。「近くで何が起きてるのか分からなかった」、続いて、「テレビもつかない」「携帯も−」と。

 そして、震災の被害を振り返った後、先生は、避難所に新聞が届き、新聞をのぞき込む人々が写る新聞掲載の写真を配り、「避難所で新聞を読んでいる人の気持ちになって、言葉を書きましょう」と指示をしました。

 授業の最後に、二人の子供が「新聞で、やっと自分たちがどうなっているのかを知ることができた」「正しい情報は、食料や水、電気のように、なくては困る。家族や親戚の情報も知りたい」と発表しました。

 あれから八年、記憶の「風化」が懸念されます。学校に何ができるかといえば、授業しかありません。子供たちに、そのときの「今」を語る新聞が、きっと教えてくれるはずです。

 (日本新聞協会NIEコーディネーター 関口修司)

 

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