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【放送芸能】

岐路に立つ若者ヘ 独映画「僕たちは希望という名の列車に乗った」

映画「僕たちは希望という名の列車に乗った」から

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■高校生が国家を敵に

 東西冷戦下の旧東ドイツで国家から弾圧を受け、自由を求めて立ち上がった高校生たちを描く独映画「僕たちは希望という名の列車に乗った」の5月17日公開に先立ち、ラース・クラウメ監督(46)が来日した。今月上旬、映画を見た東京都内の高校生たちと意見を交わし、手応えをつかんだクラウメ監督は「人生の選択を控えた若者に見てほしい」と訴える。 (竹島勇)

ラース・クラウメ監督

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 1956年、授業中の2分間の黙とうが発端となり、高校生たちが国家を敵に回してしまうという実話を基にしたストーリー。自由や抑圧、少年少女たちの人生をかけた重い決断、それを見つめる親の胸中…さまざまなテーマを含んだ衝撃的な作品に仕上げた。「圧力に対し今後どうすべきか話し合い、成長する姿など若者ならではの姿を撮りたかった」とクラウメ監督。

 フランクフルト育ちのクラウメ監督は、旧西独によるナチスのユダヤ人大量虐殺の責任追及をテーマとした映画「アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男」(2016年)を手掛けたことでも知られる。「東西で同じころ、興味深い出来事があった。それぞれを映画にできたことは私の誇り」と胸を張る。

■説教ではありません

 高校生を演じた俳優たちにとって、現実感のない過去の出来事を描いた。作品をよりリアルにするため「(主人公の)テオ役とクルト役の俳優が決まってから、彼らに合わせてせりふを修正した。当時の資料映像を見せたり、たばこの吸い方などもボディーランゲージとしてけいこした」と明かす。

 歴史や政治的なテーマを扱っているが、若者たちには気軽に見てほしいという。「支配的な体制に反逆する表現は『スター・ウォーズ』(のシリーズ)にもあり、若者の成長という点も米ハリウッド発のスーパーヒーローものに共通する。この作品は決してお説教くさくはありませんよ」

 <あらすじ>1956年、東ドイツの高校に通うテオとクルトらは、自分たちと同じようにソ連の強い影響下に置かれたハンガリーで、自由を求めた民衆による動乱があったことを知る。ハンガリー市民に共感した2人は、弾圧の犠牲者のための黙とうを提案。反対もあったが歴史の授業で2分間黙とうしたところ、当局が「社会主義国家への反逆行為だ」と調査を始める。人民教育相まで乗り出し、首謀者の名を明かさないと卒業資格を剥奪すると通告。迫られた決断とは、大学に進学しエリートとなるか、労働者としての過酷な一生を選ぶのかという意味だった。

◆親子の特別授業 都立西高で「皆さんなりの決断をしなくては」

クラウメ監督(手前左)と映画についてディスカッションする生徒や保護者=東京都杉並区の都立西高で

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 都立西高校(杉並区)で今月9日、この作品について語り合う「親子特別授業」があり、1〜3年生の生徒30人と保護者16人の計46人が出席。クラウメ監督も参加した。

 同校は授業以外の学びの場を大切にしていて、この作品を見た篠田健一郎指導教諭(公民)が「社会科学への関心を持つのに最適な作品」と感じ、今回の特別授業を企画した。保護者も参加することはクラウメ監督の要望だったという。

 作品について、生徒からは「私だったら家族の立場などを考えて、自信をもって決断できたか分からない」という意見が複数出た。ある保護者の男性も「今の日本とは違う状況だが、親として息子の幸せを考えて(対応)できるだろうか」と自分に置き換えて考えた発言が目立った。

 クラウメ監督は「(作品での)高校生は抑圧の下、悩みながら成長する。皆さんもいつかは親元を離れ独り立ちする。その時は皆さんなりの決断をしなくてはならない」と語りかけた。

 2年生の伊藤万由(まゆ)さんは取材に対し「さまざまなキャラクターによる対立が鮮明に描かれていて、深く考えさせられた作品でした。クラウメ監督と話ができて良かった」と話した。篠田指導教諭は「卒業式を終えた3年生も参加するなど、生徒たちも積極的だった。クラウメさんと意見交換できたことは有意義だった」と述べた。

 

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