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【放送芸能】

超難解な不条理劇 親子で立ち向かう 「柄本家のゴドー」20日公開

演出する柄本明(中央)、右は佑、左は時生=「柄本家のゴドー」から

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 テレビや映画で大活躍している柄本佑(たすく)(32)、時生(ときお)(29)兄弟が出演し、父の明(70)の演出で2017年に上演した舞台「ゴドーを待ちながら」の稽古風景を撮影したドキュメンタリー映画「柄本家のゴドー」が20日、東京・渋谷のユーロスペースで公開される。名作といわれながら、超難解な不条理劇に向き合う3人を追ったフリーカメラマンの山崎裕(ゆたか)(78)は「3人で舞台を作り上げる過程を興味深く伝える映画になった」と話す。 (竹島勇)

 二〇一七年一月に東京・下北沢の小劇場ザ・スズナリで上演された「ゴドー−」の稽古風景が中心。映画などで父子それぞれを撮影したことがある山崎が「この親子が(一つの)芝居をつくる姿はめったにない機会。父が演技をどう伝え、息子たちが受け止めるのかを記録したい」と熱望し、撮影と演出を務めた。

 佑と時生の「ゴドー−」出演は、一四年以来二度目。佑は「(初演で)時生と一生続けていきたい作品に出合ったと感じた。だからこそ早いうちにおやじに演出してもらいたかった」と明かし、時生も「自分にとってゴドーは最高峰(の作品)」と断言する。

 田舎道でエストラゴンとウラジーミルの二人が、いつ来るともしれない救済者ゴドーの到来を待ちながら、意味のない会話や遊びでひまつぶしに興じる物語。アイルランド出身の劇作家で小説家のサミュエル・ベケット(一九〇六〜八九年)が五二年、移住先のパリで発表し、翌年初演した戯曲で、不条理劇の代表的な作品。世界の演劇界に大きな影響を与えた。

 一方で、難解な作品としても知られ、明は今回の演出でもその境地を全身で伝えている。山崎はウラジーミルを演じる佑、エストラゴン役の時生のかみ合わないせりふの応酬に明が大声で笑ったり、情感を込めてせりふを言ってみたり。もう一人の登場人物が現れたかのように映し出した。

 一九六〇年代、小劇場演劇にのめり込んだ明にとって思い入れの強い作品という。「あのころ不条理劇は若造にとってカッコよかった。(新宿の)紀伊国屋書店で初めて買ったのがベケット全集。読んだって理解できゃしなかったけどね」

 明は二〇〇〇年にエストラゴン役で出演。「若い時は意味を理解しようとして分からなかった。この時、分からなくていいんだと分かった」と振り返り「エストラゴンたちはただ生きてるだけなんだって。それが分かって感動して泣いたんですよ。それを(演出で)息子に伝えた」と話す。

 異色作を仕上げた山崎は、明の演出術に「百面相のように実演して、力量を見せつけられた思いだ。佑に『おれに見せる芝居をするな。どうやってもいいからお客さんに見せるんだ』というダメ出しはびしびしと響いた」と感服していた。

撮影時を振り返る柄本明(左)と山崎裕

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