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【放送芸能】

香取のとりこ 慎吾アートは人生だ

アートを語る香取慎吾=東京都江東区で

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 香取慎吾(42)は俳優、歌手、タレント以外に別の顔を持つ。大胆な構図の絵を描き、不思議なオブジェを手掛けるアーティストでもある。SMAP解散後、ファンサイト「新しい地図」を拠点に多才ぶりに磨きをかけ、芸能活動と同じように創作にも励む。「僕には絵も音楽もダンスもファッションも境界線がない。すべてアート」。東京・豊洲の劇場で開催中の個展をのぞいてみると、慎吾ワールドに驚き、酔いしれた。 (酒井健)

◆喜怒哀楽くっきり

 スモークや照明を駆使した会場はまるでライブのようだ。触れると香取の心音が聞こえるピンク色のオブジェ、色鮮やかでポップな印象の絵画、ライブペインティング(制作実演)で絵の具のチューブを手に彩色する壁画は、ハート形の爆煙を噴射して飛び立つロケット…。計百二十一点が並ぶ展示に「僕がやったらこうなった。みんなでワイワイ楽しんでほしい」と笑顔を見せる。

 念願だった国内初の個展のために手掛けた新作は、自身の体がテーマ。十年間ストックしてきたという髪を「絵の具代わり」に、自身で考案したキャラクターを絵にした「黒うさぎ」など、斬新さを随所に発揮した。「若い頃からよく髪の色を変えているので、取っておけばいろいろな絵を作れると思った」。まだ金髪が未使用とのこと、次作以降に生かすつもりだ。

 楽しい作品ばかりではない。「明日はない」(二〇一三年)は、膝を抱えて一人で座る人物を描いた。キャプション(説明書き)には「絶望的な日。明日なんてない。そう思う日がたくさん来るのが人生」。でも「あさってになったら笑っている自分が憎い」とも記し、人生観がにじむ。

 落ち込んだ時など「あまり状態が良くない時、絵で発散している部分もある」と、心模様を映し出す場でもある。そんな作風に、親交が深いタレント萩本欽一は「自分が知っている『明るい慎吾』だけじゃなかったのが良かった」と称賛したという。

 絵を始めたきっかけは「小学生の頃のノートの落書き」と笑う。「そのうち、机に書いちゃって。もっと大きく描きたいからスケッチブックを買って…」。その後、独学で段ボールなどに描き続け、自由自在な感性を伸ばした。十年ほど前に初めてキャンバスに向かい「なんて書きやすいんだ」と感動。その頃から個展を開きたいと考え始めた。

10万人来場記念セレモニーで、来場者を前に壁画の制作を実演する香取=4月25日

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◆「令和」をしっかり

 念願がかなったのは昨秋、パリのルーブル美術館だった。日仏交流の催し「ジャポニスム2018」の一環として、初の個展を開いた。「僕を知らない(フランスの)女性が『すてきだから、いっぱい描いた方がいい』と言ってくれた」

 描く原動力は、作品を通じたコミュニケーション。「(鑑賞者から)『いいね』と言ってもらえると、すごくうれしい」と素直に言う。「アイドルは自分が素材。歌や芝居の役などでは、いろいろな人に料理してもらう。でも『他の人に作ってもらう僕』ではない芯の部分まで、皆さんに見てもらいたい」。表現者としてのチャレンジ、それが創作にかける情熱だ。

 僚友の稲垣吾郎(45)、草なぎ(くさなぎ)剛(44)とともに「新しい地図」を始めて一年半が過ぎた。「ゼロからスタートする覚悟だったけれど、ファンの皆さんが新しい地図の会員として支えてくれた。『一緒に仕事をしよう』と初めて声を掛けてくれた人も大勢いて、ゼロなんて言った自分が、本当に間違っていた」と感謝する。

 令和が幕を開け、「皆さんと笑顔の時間をたくさんつくれたらうれしい」と陽気な慎吾スマイルで語る。ハートの煙を上げるロケットの壁画には、新元号の文字を入れた。ロケットが飛び立つような爆発的な勢いで、新しい時代のスタートを切った。

◆開催中の個展 大盛況

 アート作品展「BOUM!BOUM!BOUM!(ブン!ブン!ブン!)」は、東京・豊洲のIHIステージアラウンド東京で、6月16日まで。累計来場者は既に10万人を超えた。

◆芸術家から「ろくでなし」に

「凪待ち」の一場面。郁男を演じた香取

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 香取は俳優としても新境地を開拓している。元気で前向きなイメージを捨て、“ろくでなし”の役に挑んだ主演映画「凪(なぎ)待ち」(白石和弥監督)が6月28日に公開を控える。

 根は善良だがギャンブルにおぼれ、自分の弱さが招く不幸に悩み苦しむ中年男の郁男役。ギャンブルから足を洗い、恋人の亜弓(西田尚美)の故郷、宮城・石巻に移る。印刷所で働き始め、亜弓とその娘の美波(恒松祐里)との新生活は順調な再出発に見えたが、自分の行動が原因で、不幸の坂を転げ落ちていく…。

 酒と暴力、醜さを含めた男を演じ「つらかった。今でも、映像の中の自分に『もうやめようよ』と言いたくなる」と香取。周囲の人たちがかける「情」からも逃げ続ける郁男の姿に「人の優しさって、こんなに痛いものなんだと感じた」と苦しい撮影を振り返った。

 白石監督は「ギャンブルに限らず、人生に失敗することは誰にでもある。そんな『喪失と再生』をテーマにした人間ドラマで、新しい香取さんを感じてもらえたら」と話している。

<かとり・しんご> 1977年、神奈川県出身。88年結成のグループ「SMAP」のメンバーに名を連ね、歌やドラマ、映画、CMなどで活躍。2016年末に解散、17年秋から稲垣吾郎、草なぎ剛と3人でファンサイト「新しい地図」の活動を始めた。東京パラリンピックのスペシャルサポーターも務める。

 

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