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【放送芸能】

We are QUEEN!! 「ボヘミアン旋風」トリビュートバンドにも

ライブで熱唱する「クイーンネス」=埼玉県川口市で

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 英ロックバンド「クイーン」のボーカル、故フレディ・マーキュリーの生き方を中心に描き、昨秋公開からロングランヒットした映画「ボヘミアン・ラプソディ」の“特需”が今も続いている。CDやDVD、関連本などが話題を集めただけではない。クイーンを崇拝してやまないスゴ腕のトリビュートバンドも追い風に乗り、ライブは大盛況。来年1月には“本家”の来日公演も決まった。クイーン旋風を体感してきた。 (山岸利行)

 ♪ウィー・ウィル、ウィー・ウィル、ロック・ユー!

 今月8日、埼玉県川口市のライブレストラン「ショック・オン」。フレディの歌声を彷彿(ほうふつ)とさせるパワフルなボーカルに満員の観客は熱狂し、絶叫した。クイーンを敬愛し、その楽曲を披露しているバンド「クイーンネス」のライブ。バンドはここで7、8年前から年数回ライブを行っているが、「これまでチケットはパラパラと売れていく感じだったが、今回は2月上旬に売り出したところ、ほぼ即日完売。キャンセル待ちも20枚ほど出た」と野口俊一店長(33)。

 クイーンの世界観そのままに、名曲約20曲を次々と繰り出すステージ。映画館での「応援上映」さながらに、観客も一緒になってこぶしを振り上げて盛り上がった。東京都江戸川区から駆けつけた男性会社員(36)が「映画を見て熱が出て、見に来た」と語れば、埼玉県内から来た女性(52)は「パワーをすべて音楽に注いでいるところが魅力」とこちらも熱い。

 ボーカルのフレディ・エトウ(56)は「ライブが年間20回ほどのペースだったのが、(オファーが増え)3倍になった」と映画公開前との変化を語り、「コアなファンのほか、親子連れも多くなった。(白いランニングシャツに口ひげをつけて)フレディのまねをした子どもも楽しんでいる」と広がりを実感する。

 ギターの清水一雄(57)は「若者と話していた時、彼は『最近の音楽は機械仕立てだが、クイーンはそうではない』と言っていた。コンピューターなどでつくり込んだり、人工知能(AI)などを使ったりした近年の音楽の時代から戻って、生の(楽器の)音の魅力が再認識されたのでは」とクイーンのブームを解説する。

「クイーア」の熱気あふれるステージ=4月13日、東京・羽田空港で

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 1973年にデビューしたクイーンは、日本でも早くから支持された。洗練された音楽、貴公子のようなルックスなどから女性ファンが多かったのも特徴だ。日本語で歌う曲を手掛けるなど、日本のファンを大切にした。それが映画の日本でのヒットにもつながった。

 4月には千葉市の幕張メッセで、クイーンのトリビュートバンド4組が競演するライブがあり、4000人を超す観客が詰めかけた。

 出演バンドの一つ「クイーア」のボーカル、バルサラ(38)は「映画公開後、ライブで乗ってる人の数が増え、反応も違う。(公開後)大きなライブを3回やり、自分のツイッターのフォロワーが4倍に増えた」と激変ぶりを話す。ドラムのロジャーM.高橋(54)も「ライブをやってほしいというメールが全国から頻繁に入っている」と明かす。

 7月にはビートルズ、KISS、レインボーといったロックバンドやアーティストを愛してやまないトリビュートバンドが一堂に会する「レジェンド・オブ・ロック」(14日、東京・日比谷野外音楽堂)が予定され、クイーアも登場する。

 主催する岡部隆史(55)によると、「ボヘミアン−」のヒットはクイーンだけでなく、英米の伝説的ロックアーティストが再発見されるきっかけになったという。「トリビュートバンドの面々も(オリジナルのバンドなどから)パワーをもらってきた。観客の人たちに疑似体験してもらうことで、“本家”を好きになってもらえたら」と岡部。

 来年には「ラプソディ・ツアー」と称して本家がやって来る。新旧ファンの注目が集まる中、クイーンネスの清水は「日本武道館で公演できたら」と夢を語る。熱気はまださめない。

◆関連CD、DVD150万枚

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 クイーンを扱うユニバーサルミュージックによると、昨年十月以降、映画のサウンドトラック盤=写真=などを含めたCDやDVD、デジタル配信の国内総出荷数は約百五十万枚を記録。不振続きの洋楽市場において、「超破格の大ヒット」と担当者は言う。

 特筆すべきは、映画でも取り上げられたアフリカ難民救済のための世界最大のチャリティーコンサート「ライヴ・エイド」(一九八五年)の実際の映像が収録された「伝説の証(あかし)〜ロック・モントリオール1981&ライヴ・エイド1985」のDVDなどが約十万枚。また、クイーンが初来日した一九七五年四月十七日を記念した「クイーンの日」に、今年は、現在では入手困難な九タイトルのCDなどが復活。別途発売の「グレイテスト・ヒッツ」といった名盤も好調な売り上げで、旧譜にも注目が集まっている。

 担当者は「今回の映画での盛り上がりは、よりクイーンを詳しく知りたいというファンの皆さんの思いが大きく、サントラ盤以外の映像商品やアルバムなどの売り上げ結果にも表れていると思う」と話している。

名盤「グレイテスト・ヒッツ」

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◆今後のブームの行方は 英国デビューから注目 音楽評論家・大貫憲章

 洋楽に精通している音楽評論家の大貫憲章(68)は、クイーンが日本でデビューする前から、英国でその存在を知り、早くから注目していた。大貫はクイーンをどう見ているのか。ブームのこれからは−。

 本国の英国でファーストアルバムが出たのが一九七三年七月。その直後に渡英していた大貫は、ロンドンのレコード店に入ったところクイーンのポスターをたまたま発見。レコードは品切れだったといい、気になっていたところ、同年暮れにクイーンの音楽に初めて触れた。その時の印象を「ギターの鳴り、曲の構成、しつらえ方など想像を超えるものがあり、(新人バンドとして)完成度が高かった」と振り返る。

クイーンブームについて話す大貫憲章=東京都内で

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 翌七四年三月、日本デビューを飾り一気にブレーク。七五年には初来日を果たした。来日時、メンバーに取材した大貫は「アルバムを出すたびに発見がある。よりハードになったり、クラシカルな要素が加わったり。一つ一つ階段を上っていくよう」と話し、楽曲の魅力については「起承転結があり、コーラスが素晴らしい。流れるような美しさがあり、場面転換も優れた職人技。“クイーンマジック”がちりばめられている」と評価する。

 映画「ボヘミアン・ラプソディ」の大ヒットについて大貫は「楽曲の良さに加え、亡くなったフレディに寄り添う気持ちもあるのでは」と分析。「昔からのファンや新しい世代のファンなど、それぞれのクイーン観があっていい」と話す。

 映画の波及効果として、さまざまなイベントや公演、関連商品発売など相次ぐ盛況ぶりを、大貫は「フレディからの贈り物」と捉える。今後、八〇年代に人気だった英バンド「カルチャー・クラブ」のボーカリスト、ボーイ・ジョージの半生を描いた映画なども計画されているといい、ロック界で話題だ。「ラプソディ・ツアー」の一環で、来年一月、さいたまスーパーアリーナなどで開かれる「クイーン+アダム・ランバート」の来日公演まではブームが続くと大貫はみている。 

<QUEEN(クイーン)> 英国のロックバンド。フレディ・マーキュリー(ボーカルなど)、ブライアン・メイ(ギター)、ロジャー・テイラー(ドラムス)、ジョン・ディーコン(ベース)の4人組。1973年、アルバム「戦慄(せんりつ)の王女」でデビュー以来、70〜80年代、世界的に活躍。「キラー・クイーン」「ボヘミアン・ラプソディ」「伝説のチャンピオン」などヒット曲多数。91年、フレディがエイズ(後天性免疫不全症候群)による合併症で死去した。

クイーンの来日公演=1981年2月12日、東京・日本武道館で

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