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【放送芸能】

没後30年 ひばり伝説、令和へ

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 昭和の歌謡界に君臨した美空ひばりが1989年6月24日に死去(享年52)して30年になる。「女王」が残した多くの名曲は平成の時代にも聴かれ続け、歌い継がれ、レコードやCDなどの累計売上枚数は1億枚を超えた。時代を超えて人の心をつかむ一方で、ファンの高齢化という現実も立ちはだかる。令和に入り、ひばりメロディーは曲がり角を迎えているのか−。 (酒井健、藤浪繁雄)

 ひばりの八十二回目の誕生日に当たる五月二十九日、東京・浅草公会堂で「美空ひばり生誕祭」が開かれた。「父恋し母恋し」「アルプスの娘たち」といった通好みの曲がレコードで流れ、年配の女性ら約千人のファンからは大歓声が上がった。親交があった作家の神津カンナ(60)が司会を務め、「世相の中にずっと生きてきた方」としのんだ。

 この日、日本コロムビアはひばりのCD、アナログレコード、カセットテープ、八トラックテープの累計売上枚数が累計一億一千七百万枚に達したと発表。八九年は九千六百九十万枚だったが、平成の三十年間で二千万枚伸ばした。

 ひばりの長男で、ひばりプロダクションの加藤和也社長(47)は「おふくろもよく頑張ったと思う。本当にファンの皆さまのおかげ」と金字塔を喜んだ。そして今後の目標として「僕が還暦を過ぎた頃に、令和生まれの子どもたちに、またごあいさつできたら」と若い世代の獲得を掲げた。

「美空ひばり生誕祭」の会場で記念撮影をするファンら=東京都台東区で

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 「ひばりちゃんの歌なくして、私の人生は成り立たない」と話すのは福島市を拠点にするひばりファンクラブ「むらさきの会」の大野美江子会長(68)。歌謡教室を運営しながら歌を指導し、毎年この時期に「ひばり歌謡祭」を開く。主に東北南部のファンたちとひばりメロディーを一日中歌っている。しかし近年、参加者の年齢層が上がり「体調の不安を訴え『今回は行けない』という声も寄せられるようになった」と明かす。二十三日に歌謡祭を開催するが「来年あたりでやめようかなとも考えている」と大野会長は悩んでいる。

 ファンの世代交代、若い層の獲得は各地にあるファン組織共通の課題だ。

ひばりメロディーを歌う有希乃路央(斎藤岳撮影)

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 その中で、幼少期からひばりの歌や人生に薫陶を受け、セミプロ歌手として活動する二十一歳の女子大生がいる。「有希乃路央(ゆきのじお)」の芸名で、東京・上野の老舗旅館「水月ホテル鴎外荘」や、地元の横浜・弘明寺(ぐみょうじ)の商店街などで歌っている。

 普段は洗足学園音楽大に通う。家族の影響で物心ついた時にはひばりの楽曲に親しみ、十歳頃から独学でひばりの歌唱法を徹底的にたたきこんだ。「リンゴ追分」などひばりの曲名を冠したコンクールで優秀な成績を収めた。「歌の神様であり、唯一無二の人」。ひばりを歌い続けるにつれ、「歌唱技術や発声など奥深さを実感する」日々だ。

 卒業後は自作の曲を披露しながら、ひばりの曲も大切にしていくつもりだ。「同世代に触れてほしい」と願うが、歌詞中の「昔の言葉」をどう理解してもらうかなど悩みも。例えば「お祭りマンボ」に出てくる「半鐘」って? それを激しく打ち続ける「スリバン」って? 昭和の曲を令和に歌い継ぐ難しさも感じている。

 日本コロムビアは二十四日、最新のシングル売り上げベスト30を二枚組みCDにして発売する(上位十曲は別表)。「CD店こそ減少しているが、『川の流れのように』が配信で再生五百万回に達したように、平成世代にも広く認識されている曲もあることが分かった」と語るのは衛藤邦夫プロデューサー(52)。「ひばりさん=演歌とのイメージを持つ人もいるが、ジャズや小唄、端唄など多彩なジャンルを歌っている。こうした音源を配信などでも仕掛けていきたい」と戦略を明かし「ひばりさんは今も現役アーティスト、看板歌手だ」と強調した。

◆天童よしみ「しっかり受け継ぎたい」

 美空ひばりを崇拝する歌手は数多い。幼少時、共演経験もある天童よしみ(64)=写真=もその一人。ひばりメロディーも歌い上げてきた実力派は「ひばりさんを手本にしてきました」と語る。

 小学二年の時、大阪・新歌舞伎座での美空ひばり公演に、オーディションで選ばれ、村娘の子役で出演した。楽屋で「『今日も頑張ろうね』とひばりさんが私の頭をなでてくれたり、『お菓子があるからおいで』とおっしゃってくださったり、気さくな方でした」と振り返る。

 小さい頃から歌好きで、芝居心もあるなど、ひばりとの共通点もあるが、「エンターテインメントの世界でひばりさんのライバルはいなかったと思う。それだけ特別の世界を持っておられた」と明かす。

 ひばりのカバーアルバムを出したり、NHK紅白歌合戦で「川の流れのように」「人生一路」などを歌ったりしたことも。「歌う時はいつも『歌わせていただきます』とひばりさんに語りかけている」。イントロを聴くとひばりの面影が脳裏をよぎるという。「音感、リズム感が素晴らしく、ベースはジャズから来ていると思う」と分析する。

 ある時、Jポップのアーティストが「リンゴ追分」を歌った例を引き合いに出し、「こんな歌い方もあるのかと思った。色あせないし、絶対飽きない」とし、令和に入った今、「若い歌手にも(ひばりの曲を)歌ってほしいし、私もしっかり受け継いでいきたい」。

 ◇ 

 新曲「大阪恋時雨」が十九日に発売された。もともとシンガー・ソングライター半崎美子が歌っていたが、笑福亭鶴瓶が「よしみにぴったり」と提案、天童本人も「胸に来るものがある」とほれ込んだ大阪系ソウルバラード。「今まで歌ってきたタイプと違いますが、泣ける作品。最近大阪のヒットソングが出てないので、ぜひ多くの方に聴いていただけたら」 (山岸利行)

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