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【放送芸能】

ショートショートで話芸のつかみはOK!

 寄席では通常、演者1人当たりの持ち時間は15分程度。「もっとじっくり楽しみたい」と思うのが客の心情と思いきや、最近は8分、5分、3分…とあちこちで短い一席が出現しているとか。忙しい現代人を意識してか、話芸も「ショートショート」の時代か? ジャンルは違えど演者たちの願いは「まず短いバージョンで興味を持ってもらい、寄席や演芸場に来場するきっかけになれば」と共通している。 (神野栄子、藤浪繁雄)

◆8分浪曲 古典語る技術あってこそ

8分浪曲を披露する沢雪絵(左)。右は曲師の佐藤貴美江=東京都新宿区で

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 ♪ここは東京・新宿の古びたビルの奥の部屋〜。

 六月中旬、東京・大久保のバー。浪曲師沢雪絵の伸びやかな節が店内を包む。女性作家の恵誕(けいたん)が手掛け、婚活に励む男性を主人公にした「嫁笛」を初披露。約八分の浪曲は、笑いありホロリとする場面あり。満席の約二十人を魅了した。

 浪曲師になって十三年の雪絵は、二〇一五年夏の公演で、主催者から五分完結の一席を依頼されたが、本番で十五分かけてしまった。その反省から「浪曲ショートショート」作りに取り組んだ。しかし、「上達せず、つらくなった」。そこで一七年、若手作家の田丸雅智が開いている短編小説講座の門をたたいた。

 小説を作る際の起承転結、リズム感などを学ぶうち、浪曲の台本作りに生かせると悟った。そして、八分の「ロボットと暮らす日」、民話を基にした五分の「猿とヒキガエルの餅競争」など十七作を創作した。

 八分浪曲は地域のイベントなど需要が多い。「七五調の節(歌)と、啖呵(たんか)(語り)のバランスを取り、短時間で客の心をとらえる難しさを感じる」と語り、そのためにも「古典を語る技術がないと引きつけられないし、ショートショートはできない。浪曲の裾野を広げたい」と自覚する。

◆5分落語 会話重視で妙味残す

「寄席や落語会が身近にない方々に聴いていただきたい」と話す笑福亭瓶二

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 いま、古典落語を一席約五分に仕立てて収録したCDシリーズ「5分落語」がヒットしている。中堅、若手の噺家(はなしか)六人が全五巻、計五十席を収録した。

 「古典噺を五分にするなんて無理、おこがましいと思った」と振り返るのは上方出身の実力派の笑福亭瓶二(へいじ)(49)。難色を示したが、妻がCDに封入する小冊子を手掛けた関係で参加。噺をそぎ落とした上で「面白いところや間とか、言い回しを生かす構成」に腐心。「壺算(つぼざん)」「ちりとてちん」「短命」「親子酒」などを粗筋や説明ではなく、会話の部分を重視して落語の妙味を残した。

洋服姿、立った姿勢でレコーディングした立川志らら

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 レコーディングは個々の好みのスタイルで実施。洋服姿、立った状態で演じた立川志らら(46)は「普段と違う方がいいと思い、あえてそうした」。子どもたちを意識して「文字からではなく聴いて覚えてほしい」と願いを込め「目黒のさんま」「初天神」「あくび指南」など滑稽噺を熱演した。

◆3分講談 「古典が基礎」肝に銘じ

3分講談を読む田辺凌鶴=東京都新宿区で

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 講談の田辺凌鶴(51)は会社に勤めていた二十年以上前、後に師事する田辺一鶴が開いていた教室を受講。その際、一鶴が「最初は短い方がいい」として「三、四分講談」を教えられた。

 二〇〇〇年に入門し、プロ講談師になった。二つ目昇進後の二〇〇七年、独演会で三分講談「サムライマン」を初披露。「英国に出た強盗の話をしたらお客さまの表情が輝いて見えた」と手応えをつかみ、新作を作り始めた。約百九十作を高座にかけ、ショートショートも武将山内一豊の立身出世の要因となった妻の内助の功を題材にした一鶴作の一席を演じたり、創作も手掛けたりしている。

 五月下旬、東京・新宿の道楽亭で「伊勢丹カードマジック」と題した三分の講談を披露。妻にバッグを買ってあげたが「5%のポイントが付くから」と、支払いは妻のカード…。本当にオレが買ってやったのか? 観客は大ウケだった。凌鶴は「起承転結をつけて短くするのは難しい。『古典が基礎だ』と言った師匠の教えを肝に銘じている」と話した。

◆練り込んで落とすことに意義 黒鉄ヒロシ

黒鉄ヒロシ

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 起承転結、切れ味鋭いオチ…。「ショートショート話芸」に通じる極意を得意としているのが、ギャグ漫画家。四コマなどの巨匠で伝統話芸にも詳しい黒鉄ヒロシ(73)に聞いた。

 −話芸と漫画に通じるところは?

 すべてがイマジネーション(想像)でつながっている。そのため言語がある。漫画にも文法(起承転結など)があるんですよ。そこで何を伝えるか。

 −ショートショートといえども、漫画でも四コマと六コマは違う?

 四コマは起承転結が「骨」だが、六コマになれば「筋肉」が付く。多弁にもなりますよ。

 −ショートショート演芸が流行のようです。初心者の入り口になる?

 僕はすべてが短くなるのはあまり賛成じゃない。というのは、中身を大づかみにして「索引作り」になっているように思う。索引を読んで分かった気になってね。安普請になっている。

 −では、意義あるショートショートとは?

 「文字数の少ない短文」とは全く意味が違う。ショートショートは練り込んで落としていく。SFショートショート作家の星新一さんは「落語でもフランス小噺(こばなし)でも全部覚えちゃえば、自分のアイデアでかみ砕いてユーモアのあるエスプリ(機知)が話せる」と言っていた。要するに教養の分量が足りない気がする。

 −話芸を面白くする方法は?

 骨の並べ方一つで面白くなる。起承転結にこだわらず、文法を知って壊す。これで面白くなる。でも(文法を)知らないでやってはだめですよ。

 

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