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【放送芸能】

学生目線で歌舞伎、クールに提言

参加してくれたのは… 写真(右)から 青山学院大4年・石川りさ子さん(21)、青山学院大3年・吉田隼大(はやた)さん(22)、横浜市立大3年・岩崎真夕(まゆ)さん(20)、早稲田大2年・村井択考(たくのり)さん(24)=東京・内幸町で

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 インバウンド全盛の今、歌舞伎など日本の伝統芸能を楽しみに訪れる外国人は多いようだ。しかし、足元を見ると日本人、特に若い世代はどれだけ親しんでいるのか…。現在、東京・国立劇場で開催中の入門者らを対象にした公演「歌舞伎鑑賞教室」に、初心者の大学生4人を伴い足を運んだ。鑑賞後の率直な感想には役者も劇場関係者も驚くのでは? (酒井健)

 鑑賞教室は一九六七年に始まった。分かりやすい演目の上演や出演者による解説「歌舞伎のみかた」、字幕表示など工夫を凝らしている。高校の校外学習でも長年親しまれている。料金は一般一等席四千円、学生千五百円と割安で、第一線の役者の舞台を楽しめる。二十四日まで開催中の今公演の演目は「三大名作」の一つ「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」から名場面の「車引(くるまびき)」、狂言を題材にした舞踊劇「棒しばり」で、出演は尾上松緑ら。坂東新悟と中村玉太郎が解説を務めた。

       ◇

 約二時間二十分の公演を見終えた学生たちに感想を語り合ってもらった。

 −初歌舞伎の感想を。

 石川 「車引」より「棒しばり」の方が取っつきやすかったかな。演技も、隈(くま)取りがない「棒しばり」のほうが(役者の)表情が分かりやすかった。

 吉田 「車引」はせりふがなかなか聞き取れなかったが、「棒しばり」は現代人にも分かりやすくて面白く、場面も理解できた。

 岩崎 「車引」は、見栄えや(隈取りや衣装の)美しさで見せる感じ。「棒しばり」はストーリーで引き込む感じだと思った。

 村井 (車引の)松王丸、梅王丸は荒々しいイメージだけど、線の細い感じの男役もあるのだなと、桜丸に親しみを感じた。

 −解説はどうだった? 途中で一分間の「写真撮影タイム」もあった。

 岩崎 隈取りの赤が血管を表しているとは知らなかった。逆に言えば、解説がなければ分からないことも多い。

 吉田 写真はスマホで撮った。(試みは)新しくていいけれど、(撮影用に)役者が衣装を着て花道を歩くなどしたほうが見栄えがするし、宣伝効果もあるのでは。

 岩崎 私も撮った。ただ、(舞台のスクリーンに表示される)「#歌舞伎みたよ」よりも「国立劇場 ○月×日公演」みたいな表示のほうがいいかな。

 −「車引」は難しかった?

 吉田 (舞台両サイドに出る)電光掲示板の字幕で、役者のせりふも表示してほしい。

 石川 舞台も見ていたいし、せりふそのままじゃなくても、簡潔に内容が分かる要約が出れば。

 村井 初心者向けにはもう少し広く知られた物語のほうがいいのでは。例えば「勧進帳」なら、知らない人は少ないだろうし。

 −ほかに言いたいことがあればどうぞ。

 岩崎 海外の知り合いに日本文化を教えるとなったら、紹介ができる。(私の)東京の観光リストには入った感じ。

 村井 解説の親しみやすさはすごくいいし、役者さんはそのままで良く、お客に受けそうな演出をする必要はないと思う。

 岩崎 (隈取り体験ができる)「歌舞伎フェイスパック」とかある。関心を持ってもらう方法に普及の手法などでもっと工夫の余地があるのでは。

 石川 初めは現代語風のせりふの演目から入って、ファンになれば自分からどんどん調べていくはず。

<菅原伝授手習鑑 車引> 「学問の神様」として知られる菅原道真をめぐる名作巨編。その中の一つの段「車引」では、道真が流罪になった後、主君が敵味方に分かれた三つ子の梅王丸、松王丸、桜丸が争う。

<棒しばり> 留守中に無断で酒を飲む家来の太郎冠者と次郎冠者に業を煮やした曽根松兵衛は、1人を棒に、もう1人を後ろ手に縛り付けて出掛ける。2人はそれでも縛られた不自由な姿のまま、酒を飲むことに成功し酔って踊り始める。

◆「引率」記者・酒井の一言

 歌舞伎初心者の若い世代に率直な感想を語ってもらった。初心者が楽しむためには“言葉の壁”が立ちはだかると感じた。

 記者が初めて歌舞伎を見た時も、武家や公家を描いた「時代物」はせりふが難解で分かりにくく、江戸の庶民を描いた「世話物」のほうが平易だと感じた。イヤホンガイドは臨場感がそがれる気がして、最近は借りていない。永遠のテーマだと思った。

 国立劇場によると、演目は出演者とも協議して決める。これまで「義経千本桜」や「女殺油地獄(おんなころしあぶらのじごく)」など多彩な名作を上演してきた。せりふの字幕は、字数の制約から電光掲示板への表示は難しいという。歌舞伎座では有料で貸し出すポータブル端末で対応しているので、技術的には可能だろう。「撮影タイム」の演出の是非など鋭い指摘も多かった。歌舞伎がより広く親しまれるための工夫をこれからも考えていきたい。

 

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