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【放送芸能】

原爆の悲惨さ知ってほしい 奈良岡朋子が朗読の一人舞台

朗読する奈良岡朋子(c)石川純

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 女優の奈良岡朋子(89)が「役者人生終幕のライフワーク」と位置づけ、二〇一三年から広島の原爆被害に苦しむ家族を描いた朗読の一人舞台を続けている。今夏は三十日の東京公演のほか、八月八日には広島市で初めて上演する。近年の国内外の情勢に「平和が脅かされつつある」と懸念する大ベテランは「この作品が平和維持につながれば」と願う。 (竹島勇)

 作品は、井伏鱒二(一八九八〜一九九三年)の小説「黒い雨」を原作にした「黒い雨−八月六日広島にて、矢須子−」(上演台本・笹部博司、演出・丹野郁弓(いくみ))。ささやかな日常生活を送る夫婦と、結婚を夢見ながら進行する原爆症に苦しむめいの矢須子を描く。奈良岡は「淡々と市井の人を描きながら心に迫り、戦争の悲惨さが伝わる作品」と話す。一三年から夏に、各地で上演してきた。

 奈良岡には広島や反戦に強い思いがある。一九五二年公開の新藤兼人監督の映画「原爆の子」に出演し、市内ロケでは飛散したガラスが突き刺さったままの家屋などを目の当たりにした。「復興にはほど遠く悲しい現状が目に焼き付いた」。自身は東京・本郷で、四五年三月十日の東京大空襲に遭い、焦げた死体の脇を歩いた経験を持つ。

 戦争を憎む気持ちは強かったが、長いことつらい体験を口にする気にはならなかった。しかし「若い俳優が戦争の実態を知らないことに危機感を抱き、話すべきだと思った」という。「黒い雨」の取り組みも「日本を覆う空気は戦前に似て、軍靴の音が聞こえるよう。車いすに乗っても続けて、若い人に平和について考えてほしい」と力説する。

 広島市では原爆投下の八月六日前後、適当な会場をなかなか押さえられず上演できなかった。今夏は八日に爆心地に近い県民文化センターを借りることができ、悲願がかなった。協力する演劇鑑賞団体「広島市民劇場」の高亀斉(こうがめひとし)事務局長(63)は「この地での公演を支えたいと思った。問い合わせが多く、原爆体験者も待ち望んでいます」と話す。

 東京公演は七月三十日午後二時から、紀伊国屋サザンシアターで。八月六日は大阪で公演。問い合わせは劇団民芸=(電)044・987・7711。

 

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