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【放送芸能】

「ジャニーズ」「吉本」 揺らぐ慣行 識者・事情通に聞く

 ジャニーズ事務所と吉本興業。芸能界で権勢を誇り、盤石だった二つの“帝国”が揺らいでいる。ジャニーズは元所属タレントに対するテレビ出演を巡り圧力をかけた疑いがあるとして、公正取引委員会(公取委)から注意を受け、吉本は所属芸人の不祥事に端を発し、“お家騒動”に発展した。いずれも背景には昭和の時代から続く慣行があるようだが…。識者や事情通に聞いた。

◆反社会勢力と接点

記者会見する吉本興業の岡本昭彦社長(中央)と宮迫博之(左)、田村亮のコラージュ

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 吉本興業は六月六日、反社会勢力のパーティーに会社を通さず芸人を出席させたとして、所属芸人の入江慎也との契約解消を発表。同二十四日には宮迫博之、田村亮ら十一人を謹慎処分とした。二十七日には「スリムクラブ」など二組を無期限謹慎処分にした。

 今月に入り、再発防止策として所属タレント全員と、依頼された仕事の報告を義務付ける「共同確認書」を交わす−とした。一方で、十九日には宮迫との契約解消を発表した。二十日に宮迫と田村が謝罪会見。早期の会見開催を希望したが吉本側に止められたと発言すると、所属タレントが吉本を批判する事態に。それらを受け、二十二日に岡本昭彦社長が会見し謝罪、宮迫の処分撤回を発表した。その後、所属タレントとの契約書締結と第三者委員会設置の方針も明らかに。

◆出演阻止へ圧力?

ジャニーズ事務所=東京都港区で

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 ジャニーズ事務所が民放テレビ局などに「SMAP」の元メンバー稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾を出演させないよう圧力をかけた疑いがあるとして、公取委が独禁法違反につながる恐れがあるとして同事務所を注意した。

「SMAP」の元メンバー(左から)稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾

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 SMAPは二〇一六年末解散、三人は事務所から独立した。その後、主なレギュラー番組が終了し、公取委は関係者から事情を聴いて調査していた。

 独禁法の「注意」は、違反行為の存在を疑うに足る証拠が得られないが、違反につながる恐れがある行為があるときに、未然防止を図るために取られる措置。公取委の有識者会議は昨年二月、事務所が強い立場を利用して芸能人と不当な契約を結んだり、過度な移籍制限をしたりすることは独禁法違反の恐れがあると指摘した。

◆KADOKAWAコンテンツプロデューサー・吉川圭三「事務所の力強まった弊害」

 芸能界のある種の均衡が壊れたように思う。

 私がテレビ業界に入ったころは、ジャニーズ事務所はあまたある芸能事務所の一つであり、吉本興業は関西の一お笑い芸能事務所だった。ジャニーズはSMAPの大人気で、吉本はお笑いブームに乗って巨大になっていき、テレビ局は両事務所に依存するようになっていった。

 事務所が強くなってくると、人気タレントを出演させる代わりに、事務所側が推すタレントも出演させる取引のようなことが行われるようになってきた。タレントの人選も、一番組のプロデューサーだけで完結していたものが、編成部門まで加わって交通整理やパズルのようなことになった。

 本来なら先にやりたい番組の企画があって、そこに必要なタレントをブッキングしていくもの。しかし、テレビの作り手たちはまず人気があるタレントを押さえ、企画を重視しなくなってきた。結果、各局似たような番組ばかりになってしまっている。

 それぞれ原因は違うが、両事務所は求心力を失ってきているように思う。今回の一連の騒動はテレビと事務所の関係を見直すきっかけになるのではないか。もう一度、原点に戻って、芸能事務所ではなく視聴者ファーストになるべきだ。 (聞き手・原田晋也)

<よしかわ・けいぞう> 一九八二年日本テレビ入社。「世界まる見え!テレビ特捜部」「恋のから騒ぎ」など多くの人気番組を手掛けた。

◆作家・アイドル評論家・中森明夫「芸能界の在り方変わる時」

 芸能は時代を象徴する。令和は後にジャニーズ事務所と吉本興業の変化を機に、芸能界の在り方が変わった時代として認識されると思う。両社に代表される芸能事務所に求められるのは、コンプライアンス(法令順守)と説明責任だ。

 ジャニーズに変化を促すのは、今回の公取委の注意と一般ファンのSNSだ。

 SMAP分裂でジャニーズを出た稲垣さんら三人は、CM出演はあるものの、民放テレビの番組出演はない。それまでの人気からすればおかしな話で、ファンもジャニーズの意向だと感じ、芸能ジャーナリズムが伝えなくてもSNSで批判の声を上げた。

 テレビも、どこかキー局が元SMAPの三人を出演させれば、状況は大きく変わる。

 「嵐」の桜井翔さんがニュースキャスターを務めているように、両社のタレントは報道や情報番組など公共性の高い仕事にまで進出している。また吉本は教育事業に進出し、官民ファンドの出資を受けるという。コンプライアンスと説明責任が求められる理由だ。

 ジャニーズはSMAP解散騒動の際の社会への説明がまったく足りず、タレントの思いは伝わらなかった。吉本の問題は流動的だが、一応記者会見し個々の芸人たちがテレビやSNSで意見を表明している。吉本の方が自由度が高い。

 (聞き手・竹島勇)

<なかもり・あきお> サブカルチャーや芸能界、アイドルについて積極的に発言。著書に「アイドルになりたい!」(筑摩書房)など。

◆コラムニスト・桧山珠美「変革求められるテレビ局」

 今までテレビ業界や「芸能村」で当たり前と思われていたことが明るみに出て、これからどうなるか注目している。パンドラの箱が開いたかな。

 吉本の問題は、芸人の闇営業に端を発したが、捨て身の宮迫さんの会見に視聴者は「真実がある」と感じ、流れが変わった。岡本社長より、芸歴三十年の宮迫さんのほうが迫力があった。社長はファミリー的な企業体質を強調したが、公私のけじめのない接し方をしたら、典型的なブラック企業になってしまう。「働き方改革なんてどこの話?」と思っている世間の人々の怨念も集めたのでは。

 一方で、芸人は午後五時で帰れる仕事ではないし、品行方正ならば良いという仕事でもない。最低賃金を保証したら(優れた芸をするための)ハングリー精神は発揮できるだろうか。一般社会の基準をそのまま当てはめて、みんなで吉本を攻撃するのもどうかと思う。

 ジャニーズは、吉本問題の陰に隠れることができて、得をしているのでは。元SMAPの三人のような才能ある人たちが干されるのはやはり残念。テレビ局が変わらないと、視聴者に見放されてしまいますね。 (聞き手・酒井健)

<ひやま・たまみ> 編集プロダクション、出版社勤務を経てフリーに。新聞や雑誌にテレビ、ラジオに関するコラムを執筆。

 

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