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【放送芸能】

メイドと雇い主の許されぬ恋 映画「あなたの名前を呼べたなら」

「あなたの名前を呼べたなら」に込めた思いを語るロヘナ・ゲラ監督=東京都中央区で

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 公開中のインド・フランス合作映画「あなたの名前を呼べたなら」は、経済発展が著しいインドで、メイドと雇い主の男性とのひそやかな恋模様を描いている。身分制度が厳しく、因習が残るインド社会では異なる階級の男女の恋愛はタブーとされる。同国出身で欧米の文化に触れているロヘナ・ゲラ監督(46)は初の長編劇映画に「母国の現状ではあり得ないが、社会は変わっていくべきだ」との思いを託す。 (竹島勇)

 舞台はインフラ整備など近代化が進むムンバイ。農村出身のラトナ(ティロタマ・ショーム)は結婚四カ月で夫に先立たれ、住み込みのメイドとして建設会社の御曹司アシュヴィン(ビべーク・ゴーンバル)の新婚家庭で働くはずだったが、結婚が破談になり、ラトナは傷心のアシュヴィンの身の回りの世話をすることに…。心ならずも会社を継いだアシュヴィンは、ファッションデザイナーになる夢を抱き、前向きに生きるラトナに恋心を抱く。

 十八歳までインドで暮らし、米スタンフォード大学で英文学などを学び、現在はパリ在住のゲラ監督は「私はインドを中からも外からも感じることができる存在」という。

 ゲラ監督の生家にも住み込みのメイドがいて親しく接していたというが、「彼女との間に“見えない壁”の存在を感じてもいた。そして、それはおかしいことだと悩み続けてきた」と明かす。米の自由な空気に触れ、帰国後も旧態依然の階級社会が続いていることに無力感と自分もこの古いシステムの一員なのだとの葛藤を感じた。

 ずっと心に秘めていた問題意識を長編デビュー作に込めた。ラブストーリーにしたのは「恋愛感情については二人は平等。双方の立場を伝えやすい」からだ。ラトナは理不尽な目に遭いながらも、人生に希望を持ち人間の尊厳を大切にする存在とし、そのラトナから「サー(ご主人様)」と呼ばれるアシュヴィンは誠実な人格にするなど、鑑賞者が共感しやすい工夫を凝らした。

 現代インドで二人のような身分違いの恋愛はおおっぴらにはできない。「秘密裏にならあるとは思うが、自由な恋愛が公然と認められる社会になるべきだ」とゲラ監督は訴える。

 カンヌ国際映画祭批評家週間で賞を取るなど、国外では評価されている。「映画というエンターテインメントなら、現実の社会では無理でも魅力的な物語やキャラクターを提示することで『あんなふうになりたい』と思ってもらえる。映画には社会を変えていく力があると信じています」とゲラ監督は力を込めた。

「あなたの名前を呼べたなら」から。ラトナ(ティロタマ・ショーム(左))とアシュヴィン(ビべーク・ゴーンバル)。※東京・渋谷のBunkamuraル・シネマなどで公開中

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