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【放送芸能】

予算も時間も↓ 面白さ要求↑ TBSやらせ問題 クレイジーな背景!?

8月14日の2時間スペシャルで、事前に準備した生物をその場で捕獲したように見せたシーン

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 TBS系のバラエティー番組「クレイジージャーニー」(水曜午後十一時五十六分)で、「やらせ」が発覚した。海外の珍しい生物を捕獲する企画で、スタッフが事前に準備した生物を実際にその場で発見して捕まえたかのように見せていた。背景には何があったのか。識者や業界関係者に聞いた。 (原田晋也)

 番組は、一風変わったことや独特なことに取り組んでいる人をスタジオに招いて話を聞いたり、ディレクターが同行ロケをしたりする。問題となった企画は、静岡大の加藤英明講師が「爬虫(はちゅう)類ハンター」としてカメルーンやマダガスカル、メキシコなどに出向き、珍しいトカゲやヘビなどを追う内容だった。探していた生物を見つけると、加藤講師の目つきが変わり、突如猛ダッシュで飛び掛かり素手で捕獲。少年のように目を輝かせながら「獲(と)った!」と叫ぶ姿は視聴者に強烈な印象を与え、人気の企画だった。

 TBSによると、八月十四日の二時間スペシャルとその日深夜のレギュラー枠でメキシコでのロケを放送後、外部から「自然に見つけたものではないのではないか」と指摘があった。調査したところ、この日放送された六種類の生物のうちメキシコサラマンダー、アリゲータートカゲ、メキシコドクトカゲ、ヘルメットイグアナの四種が事前に準備して撮影したものだったという。ほかに計六回、十一種類の生物を事前に準備していたことがわかった。加藤講師には事情を伝えていなかった。

8月14日の2時間スペシャルで、事前に準備した生物をその場で捕獲したように見せたシーン

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 テレビ朝日やAbemaTVで多くの番組を手掛け、現在は独立している鎮目(しずめ)博道プロデューサーは「日本で珍しい動物が簡単に見つかればおかしいと思うが、なじみの薄い国で、しかも学者が出演していたら誰も疑えない状況。そういう状況で事実ではないことを放送したのは責任が重い」と批判する。

 背景には、海外ロケ番組が増える中、制作現場に予算と時間の余裕がなくなっている事情があるようだ。ある海外コーディネート会社の関係者は「昨今の海外ロケ番組は低予算が多い割に、時間的余裕がないものが多い傾向がある」と語る。今回、問題発覚のきっかけとなったメキシコロケもわずか七月二〜五日の四日間だった。

 また、ある番組制作会社の幹部はテレビ業界共通の傾向として「リーマン・ショック(二〇〇八年)の時期に、一度下がってしまった制作費が『この予算でもできるでしょう』となり、元に戻らなくなってしまった」と説明する。

 鎮目プロデューサーは「予算や時間は少なくなる一方、求められるレベルが上がり、ロケに行って『捕まえられませんでした』と言いにくくなってきたのではないか」と推測する。対策として「過剰に面白いものを求めすぎないこと」を挙げる。「テレビマンは失敗も面白く見せる工夫が必要だし、見る側も、うまい結果が必ずしも起こらなくてもそのリアル感を楽しんでもらたい」

 クレイジージャーニーに出演し、無政府状態の東アフリカのソマリアに潜入した経験などを語った経験があるノンフィクション作家の高野秀行は「スタッフは一生懸命で、担当ディレクターもよく本を読み込んで丁寧に事実確認をしてくれた。やらせ体質などは感じなかった」と振り返る。

 番組は調査が完了するまで休止となり、再開のめどは立っていない。高野は「あそこにしかはまらない、僕みたいな人間はいる。報道でもなくバラエティーでもなく、変わっていることをやっている人間をリスペクトしつつ面白がってくれるオンリーワンの番組だ。事実とすれば残念だが、仕切り直して復活してほしい」と複雑な思いを明かした。

 

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