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【放送芸能】

報道の使命、揺らぐ危機 NHKかんぽ報道経営委が会長に注意

NHK放送センター

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◆識者に聞く

 かんぽ生命保険の不正販売問題を報じたNHKの「クローズアップ現代+(プラス)」を巡り、NHK経営委員会が昨年10月、NHKの上田良一会長を厳重注意していた。NHKは「自主自律や番組編集の自由が損なわれた事実はない」、石原進経営委員長も「番組に介入する意図は全くなかった」とそれぞれ主張するが、日本郵政グループの執拗(しつよう)な抗議に屈し、報道の現場を萎縮させたようにも受け取れる。問題の本質はどこにあるのか、識者に聞いた。 (原田晋也、酒井健)

(左)上田良一NHK会長 (中)石原進NHK経営委員長 (右)鈴木康雄日本郵政・上級副社長

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◆「公共性」 認識の欠如 服部孝章・立教大名誉教授(メディア法)

 NHK、経営委、日本郵政の三者が、それぞれ勝手に自分たちの立場と感想を述べ合っているような印象だ。それぞれの組織が何を改善して、どんな将来像を描いたらいいのか全く見えてこない。

 他の報道機関に先駆けて、かんぽ不正問題を報じた「クロ現+」は称賛されていい。しかし、続編の放送が遅れたことで、かんぽ問題の被害は拡大してしまったといえる。「取材が(放送の段階まで)尽くせなかった」というNHKの説明も説得力がない。

 「NHKはきちんとした報道ができない」という印象を視聴者に与えた社会的損失は大きい。組織もメディアもきちんと責任を問い、そしてNHK会長と経営委員長は辞任すべきだ。

 日本郵政の鈴木康雄・上級副社長が「(NHKは)まるで暴力団と一緒」という発言をしたが、自分たちが答えたくないことに迫ってきた報道機関の活動を暴力団と表現した。メディア不信の風潮の中、報道が持つ公共的使命への認識の底が抜けてしまった気がする。郵政も公共的な事業体なので、天に唾する発言だ。きちんと批判されるべきだろう。

◆放送法違反 明らか 上村達男元経営委員長代行 ・早稲田大名誉教授

 厳重注意は「今後、こういうことをするな」という意味で、明らかに放送法が禁ずる「干渉」「規律付け」にあたる。経営委が執行と監督の区別がついていないことが問題の根本にある。仮に職員のあり方が問題だとしてもそれは執行内部の問題であり、注意権限は委員長にはない。

 放送法では執行の全責任は会長にある。経営委は決議事項にノーと言うことはできるが「こうしろ」と指図はできない。会長も「注意処分を受ける根拠は何か」と聞くべきだった。

 議事録に注意の記載がないのは、してはいけないことをしてしまったから書けなかったのではないか。委員長は議事録の作成責任者として文言の調整などはできるが、あったことをなかったことにはできない。

 経営監督機関の経営委と執行機関の会長は別個独立の機関であり、上下関係ではない。今回の注意は会長に対する上司という感覚でなされたことのように見える。これが正しければ今後も、経営委はNHK職員の問題があるたびに同じようなことをしてよいことになるが、それは放送法違反の常態化を意味する。 

<NHK経営委員会> 放送法に基づき設置されているNHKの最高意思決定機関。委員は12人で、国会の同意を得て首相が任命する。企業経営者や学識経験者らで構成され、公共の福祉に関し公正な判断をするよう求められている。NHKの経営方針や予算などを議決する権限があり、NHK会長ら執行部を監督する。2007年の放送法改正で、経営委員が個別番組の編集に関与できないことを明確にする規定が追加された。委員長は石原進JR九州相談役。

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