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【放送芸能】

伝統芸能 究める外国人

 和の芸こそワタシノジンセイ−。能楽や落語、邦楽器、舞踊などに魅了され、道を究めようと励み、プロになる外国人も続々現れている。クールジャパンの時代、地球の隅々に広まる狭いニッポンの伝統芸能。取りつかれた人は何を思う?(神野栄子)

◆落語 桂三輝サンシャイン(カナダ) NY高座大入り爆笑

 9月19日、米ニューヨーク、マンハッタンの劇場。大入りの約350席は爆笑の連続だった。高座にはカナダ出身の落語家、桂三輝(サンシャイン)(49)。師匠の六代目桂文枝の創作噺(ばなし)「生まれ変わり」や古典「ちりとてちん」などを英語で熱演した。

 母国で劇作家、作曲家としてミュージカルを手掛けるうち能楽に興味を持ち1999年、29歳の時に来日。しかし、師匠の高座に衝撃を受け、道を変えた。2008年に入門。着物の畳み方やお茶出しなどから始め「気遣いや思いやりを、落語家の生活から学んだ」と振り返る。

 13年からは海外公演を始めた。英語とフランス語を駆使し、アジアや欧州、アフリカなどの国々で上演してきた。「国が違っても一つの噺で笑いが起きる箇所は同じ。落語には伝統があるので、時代も国境も超えるのだと思う」と語る。マンハッタンの劇場では毎週木曜と土曜に口演。「ワールドツアーが目標」と夢は大きい。

◆三味線 ワッシー・ビンセントJr.(カメルーン) 「新内はブルース」

富士松菊三郎(右)の指導で新内三味線の稽古をするワッシー=千葉県松戸市で

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 ♪縁でこそあれ末かけて約束かため身をかため〜

 物語に乗せて演奏する三味線音楽(浄瑠璃)で、江戸発祥の一流派、新内節の曲の弾き語りを稽古しているのは、カメルーン出身のワッシー・ビンセントJr.(55)。四半世紀ほど前、ドラム奏者として打楽器を広く勉強しようと、縁あって来日。大阪のホームステイ先だった新内節の師匠宅にあった三味線に興味を持ち、東京の富士松菊三郎(75)=現在は千葉県松戸市=を紹介され師事した。

 長年稽古を積んだワッシーは「カメルーンでは激しい音が多いが、新内節の哀調に満ちた音色を聴き、音楽観が変わった」と言う。菊三郎は「名前を出しても恥ずかしくない音色になってきた」と称賛、「富士松菊和志(きくわし)」の名を授けた。

 「新内節は日本のブルース」とワッシー。新内節のリズムと音色を取り入れ、「アフロ三味線」と称する分野を創設。約二十曲手掛け、ライブで披露している。「新内節から生まれたアフリカンポップスです」

◆日舞 岡田ユピン(タイ) 来月には名を披露

師匠の花柳珠絃(左)から指導を受ける岡田ユピン=東京都足立区で

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 タイ出身の岡田ユピン(52)=東京都足立区=は、日本舞踊花柳流の花柳珠絃(たまいと)に師事して十年余。精進のかいあって、先ごろ花柳絃十夢優(いととむゆう)の名をもらった。

 タイで出会った日本人男性と結婚し約二十年。タイ舞踊の経験があるユピンは、日本で盆踊りに参加し「指の繊細な動きで表現するタイ舞踊とは異なり、全身で表現する日本舞踊のしなやかさに引かれた」という。一方で「歌詞も曲も理解して、心情を表現する難しさがある」と猛稽古を積む日々。そんな弟子に珠絃は「勘がよく覚えが早い」とほめる。

 帰省して「東京音頭」を披露したこともあり「(タイ)各地で日本舞踊を広めたい」と話す。十一月四日午前十一時半、東京・国立小劇場で開かれる「珠いと会」に出演。絃十夢優の名をお披露目し、清元「神田祭」を舞う。

◆体験教室が人気

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 プロとして活動する外国人は、ほかに図表(上)のような人たちがいる。

 インバウンド全盛の昨今、伝統芸能を知り、体験したいと望む訪日観光客は多い。日本の伝統文化や芸能を発信する「アーツカウンシル東京」(東京都歴史文化財団)は2015年度から、外国人向けプログラムを実施。曲芸や紙切り、和妻といった演芸に加え、日本舞踊や三味線演奏などのプログラムがある。

 同財団によると、参加した外国人は15年度の約2万8000人から、18年度には約3万5000人と3年で約25%増加した。担当者の菅原望さんは「どのプログラムも外国人に好評でSNSなどで広がっていると実感する。浴衣を着て写真撮影ができる日本舞踊体験は人気があります」と話す。

 

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