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【放送芸能】

小松政夫 37年ぶり小劇場で主役「大生前葬」 まだ死なないのかと言われたいな、あはは

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 コメディアンで俳優の小松政夫(77)が37年ぶりに小劇場で主役を務める。31日初日の舞台は、題して「うつつ〜小松政夫の大生前葬〜」。小松のアイデアを満載し、かつてテレビを席巻した瞬間芸や宴会芸、はやり言葉が玉手箱のように飛び出す。「腹を抱えて笑い転げ、最後にホロリとする舞台にしたい」と意気込む希代の喜劇人が“生前葬”を前に、舞台人としての気概をぶちまけた。 (立尾良二)

◆“笑撃”の至芸オンパレード

6月に東京の仙行寺で“営まれた”発表会見。出演者が勢ぞろい(c)舞台「うつつ〜小松政夫の大生前葬〜」製作委員会

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 小松は、今年も東京・明治座や福岡・博多座といった大劇場や女優一座の地方巡業、映画、テレビドラマに引っ張りだこ。自身の演芸会や講演会でも全国を飛び回る。そんな中、1982年に東京・中野のミニシアターで大好評を博した「一人芝居〜四畳半物語」以来、客席百数十席の劇場ステージに立つ。

 「よーし、やってやろうと、やる気満々です。お客の息づかいが聞こえ、ごまかしが利かない“小屋”です。思う存分、遠慮なく私の持ち物であるネタや芸を全部ぶちまけますよ」と元気いっぱいだ。「このじいさんがどう生きてきたか、分かっていただきましょう。お客から、もう勘弁してくれと言われるまでやりたい気持ちです。あはは…」

稽古に熱の入る出演者たち。小松(左)自ら名ギャグを直伝?

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 「生前葬」とは大ごとだが、「誰でも逝くんだし、この歳(とし)だからいいかなと。老人役はせりふをゆっくりにして、見た目がじいさんなら誰でも簡単にできます。でも元気がいいじいさんを演じるのは難しい。ヨボヨボのじいさんがシャキーンとして走り回れば、それだけで面白いんです」と屈託がない。

お熱いシーン?の稽古も。右は棚橋幸代

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 「舞台で死ねたら本望」と言う人も多い役者魂については、「バカ言っちゃいけない」とピシャリ。「舞台中に死なれたら幕は下ろすし、代役は立てなきゃいけないし、みんな大迷惑です。この舞台が終わるまでは死ぬもんかと、必死でつとめ上げて、2、3日後に死ぬのが潔い」。仲が良かった1歳下の女優の故樹木希林の生き方に触れ、「彼女はがんが全身に転移しながら10年以上生きた。あの潔さを見ると生前葬もいいのかな。私は生きているからできるんですね」。

 俳優について「せりふを覚えられなくなったら辞める覚悟をもたなきゃならない。役者の世界には自然淘汰(とうた)がいっぱいある。“あのスターはいま”みたいな番組は嫌いです。『老兵は死なず、ただ消え去るのみ』という言葉が好きです」と理想像を熱く語る。

 いま、久しぶりの小劇場にわくわくしているという。「お客を笑って泣かせるのがコメディアンの神髄。芝居をやるからには最後まで舞台を走り回り、若者が『わーっ、この老人はだれだ』と驚くようなことをやりたい」と言いつつ、「私の歳になればボケ老人になって当たり前。歳は歳なりですよ」とも。

 ただ「この生前葬の舞台を続けて全国を回り、『小松はまだ死なないのか』と言われてみたいな。だって香典を2000万円集めれば、(金融庁の審議会が試算した)老後資金の不足が解消されます。私はね、今までずいぶん稼いだのに、ぜーんぶ飲み代に消えちゃったからね。あはは…」と笑う姿は、十八番のキャラクター「小松の親分さん」の健在ぶりを高らかに示した。

 「うつつ〜小松政夫の大生前葬〜」 記憶を失った老コメディアンを、小松が実名で演じる。妻が夫の記憶を取り戻してある物の在りかを探そうとするが、別れた前妻との間にもうけた一人娘がその鍵を握っていると知る。記憶回復センターを使って画策するが…。共演は奈良富士子、しゅはまはるみ、岡元あつこ、棚橋幸代、帯金ゆかりら。31日から11月4日まで、東京・中目黒キンケロ・シアターで計8公演。予約はCNプレイガイド=(電)0570・08・9999。

◆盟友・石倉三郎がエール 「親分らしいや まだまだ突っ走って」

「親分、エライ!」とエールを送る石倉三郎=京都市東山区で

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 小松を“親分”と慕う盟友の石倉三郎(72)は「親分の生前葬、いいじゃないですか。どんどんおやりなさい。しかも『大』が付いているのが親分らしいや。『あんたはエライ』と言いたい」と、小松のギャグを引用してエールを送る。

 石倉も小松と同じく十九歳で俳優を志して大阪から上京。苦労を重ねて俳優としての地位を築いた。「実は植木等さんに憧れて弟子入りしようとしたら、親分みたいなすごい人に先を越されちゃって挫折したんですよ」という。その小松について「苦労した親分は、人の痛みが百倍もわかる人。昔かたぎでくそまじめなんです」と人となりを語り、敬意を表する。

 小松とはテレビドラマや舞台で共演し、息の合った演技を見せる。今や日本喜劇人協会の会長と副会長だ。その会長の「大生前葬」。「それをやる状況になったということでしょう。誰もが知っているコメディアン小松政夫をぶちかまして、まだまだ突っ走ってほしいですね」。石倉は京都・南座の舞台「喜劇 道頓堀ものがたり」に出演中(十一月五日まで)のため、「生前葬に参列できずもどかしい。参列って、親分のそばにいて共演するってことですよ」と笑う。

 「親分はコメディアンとして一流。今回の舞台でも演技者として観客を沸かすに違いない」とみる。「かつて旗揚げした『小松政夫一座』を再興すべきです。私も彼を支えて、大いに突っ込みますよ」と“本物”の喜劇復活を願っている。

<こまつ・まさお> 1942年、福岡市博多生まれ。19歳で上京、仕事を転々とし自動車のトップセールスマンになる。64年「ハナ肇とクレージーキャッツ」の植木等の付き人兼運転手となり芸能界入り。テレビ番組「シャボン玉ホリデー」でデビュー。舞台や映画、テレビに多数出演。「電線音頭」「しらけ鳥音頭」「小松の親分さん」などのキャラクターを大ヒットさせ、「知らない、知らない」「どーかひとつ」などのはやり言葉でコメディアンとして人気者に。俳優としても時代劇から学園もの、不条理劇まで何でもこなしている。昨年、本紙連載「この道」で半生を語り、書籍「ひょうげもん」(さくら舎)として出版。日本喜劇人協会会長。

 

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