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【放送芸能】

「布袋戯」守る 第一人者 ドキュメンタリー映画「台湾、街かどの人形劇」

「台湾、街かどの人形劇」の一場面。人形を手にする陳錫煌

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 台湾に「布袋戯(ほていぎ)」というジャンルの人形劇がある。組み立て式の舞台で、人形師が高さ30センチ前後の人形を操って演じる台湾に息づく伝統芸能だ。30日公開の映画「台湾、街かどの人形劇」(楊力州(ヤンリージョウ)監督)は、激動の台湾を生き抜き、布袋戯を後世に伝えようと苦闘する第一人者の人形師、陳錫煌(チェンシーホァン)(88)の足跡を追ったドキュメンタリー。9月に来日した陳は「(映画で)興味を持ってもらい、ぜひ日本で公演したい」と語る。 (酒井健)

 今も現役の陳は、台湾では「人間国宝」だ。公演で飛び回り、後進の育成にも力を注いでいる。しかし、街頭公演などで大衆娯楽として親しまれた布袋戯は、娯楽の多様化を背景に衰退傾向が続く。

 映画の中で、陳は伝統を守るため、コンテスト出場者に「人間はこんな動きはしない」と妥協を許さず演技を指導。一方で、外国人も弟子に迎え「誰にでも教える」「何も隠さない」と開かれた一面も見せる。

 陳は同じ人間国宝で、俳優としても知られた人形師、李天禄(リティエンルー)(一九一〇〜九八年)の長男。映画では偉大な父との確執も描かれるが、陳は自分の代で、人形の指を改良し、櫛(くし)で髪をすく動作を編み出すなど、独自に進化させた。取材に「人形を本当の人間だと思っている。どうすれば人間に近づけるか。自分の頭で考え、少しずつ改良してきた」と答えた。

 日本統治時代には、政府の意向で水戸黄門を演じた経験も披露。「(脚本は)悪くなかったが、皿回しの一団を入れて華やかにしてみた」と振り返る。国民党の独裁時代は反共宣伝の演目を義務づけられたこともあるが「芸人はまじめで素朴。やれと言われたらやるのが普通」と、ひょうひょうと受け流す。

 継承への苦悩は、日本の伝統芸能にも共通する。陳は「若い人にどう魅力を伝え、いかに観客を育てていくか。映画を通じて多くの人に関心を持ってもらい、ファンになってもらいたい」と望んでいる。

◆横浜・中華街では孫弟子活躍

布袋戯の皿回しを実演する金川量=横浜市中区で

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 陳錫煌(チェンシーホァン)の孫弟子に当たる日本人が横浜・中華街で活動している。布袋戯の魅力を「人形の繊細な動きや感情表現の豊かさ」と言う金川量(かながわりょう)(50)は中国茶の専門店「悟空茶荘」で週一回、実演している。

 金川は北京で京劇を学んだ後、「より自由度が高い」布袋戯に魅了され、二〇〇八年に陳の一門に弟子入り。西遊記や水滸伝など中華圏の多彩な名作を「分かりやすく日本に紹介したい」と志し、台湾と行き来しながら活動している。

 毎週木曜午後、店で約二十分間の実演を計三回、皿回しや獅子舞などの「見どころ」を披露している。今、日本で布袋戯を演じているのは、金川の他には沖縄に一劇団があるという。「仲間を増やし、中華圏の愉快な物語を日本語で広げたい」と願っている。

 

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