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【放送芸能】

名作映画を生オケで シネマコンサート盛況

迫力ある映像と調和した音楽で盛り上がった「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」 HARRY POTTER characters,names and related indicia are(C)&TM Warner Bros.Entertainment Inc.WIZARDING WORLD trademark and logo(C)&TM Warner Bros.Entertainment Inc.Publishing Rights(C)JKR.(s20)

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 名作映画を生オーケストラの演奏とともに楽しむ「シネマコンサート」が盛んに行われている。大スクリーンで劇中音楽をライブで鑑賞できるゴージャスなひとときは、映画の新たな上映スタイルとしてすっかり定着した。公演はどのように広がっていったのか。その舞台裏は−。 (竹島勇)

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」inコンサートでは映画をイメージしたファッションで来場した観客もいた=2019年4月、東京・NHKホールで

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 昨年十二月二十八日、東京都千代田区の東京国際フォーラム。ホールAではファンタジー作品「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」(二〇〇四年)が、東京フィルハーモニー交響楽団(東フィル)の演奏で上映された。ステージの600インチの大スクリーンの下には約九十人のフルオーケストラがスタンバイ。同作の音楽を作曲した巨匠ジョン・ウィリアムズのアシスタントを務めた経験もあるホープ原田慶太楼(34)が指揮を務めた。

 上映が始まると、オーケストラも薄明かりに浮かび上がる。原田のタクトに演奏が合い、映画と劇中の名曲が見事に調和した。エンディングでは満員の五千人の観客が大喝采だった。

「美女と野獣」イン・コンサートのイメージ(C)2019 Disney

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 大学で音楽を学び管楽器を担当している大阪府の辻真知子さん(20)は「さすが東フィルの演奏レベルは高く、映画にぴったり合っているのに感動した」と語り、横浜市の大学二年生の女性(20)は「九千八百円のチケットを彼氏の分も即買った。映画と比べると高いが、好きな作品をオケの生演奏で楽しめるなら出せる金額」と満足そうだった。

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 欧米で始まったシネマコンサート。日本ではイベント会社のキョードー東京が二〇一二年九月、映画「ウエスト・サイド物語」の上映イベントを実施したのが先駆けだ。劇中音楽を作曲したレナード・バーンスタインのまな弟子、佐渡裕を指揮者に起用したこともあって興行的に成功。同社は「シネマ・オーケストラ(シネオケ)」の呼称を商標登録し、公演を重ねるごとに話題を集めていった。国内では数社が企画や制作に取り組み、一五年ごろから定着した。

 昨年末の「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」公演を開いたプロマックス社のCOO(最高執行責任者)の飯島則充プロデューサーは「欧米ではやってきたので五年ほど前に始めた」と振り返る。同社もキョードー東京も上演作品選びについては「ヒットした映画で、音楽が印象的なもの」と口をそろえる。

 キョードー東京の川池聡子取締役は「欧米ものは映画から音楽を抜き、オケ用の譜面などを購入する」とし、プロマックスの飯島プロデューサーは「邦画の『砂の器』(一九七四年)は譜面起こしなどまで自社でやった」と説明する。

 公演に変化の兆しも出てきた。この二社にハーモニージャパンを加えた三社で制作するディズニーアニメ「『美女と野獣』イン・コンサート」(二月二十二、二十三日に横浜アリーナで開催)では、歌唱部分で主人公のベル役に上白石萌音を起用。テーマ曲「美女と野獣」をクリスタル ケイが歌う。川池取締役は「シネオケの本来の形式は映画上映とオーケストラ演奏だが、人気芸能人の歌唱を入れたり、観客にコスプレを呼び掛けたりとイベント性を高める新たな展開をしている」と戦略を語る。

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 シネマコンサートなどライブエンターテインメントの動向を調査している「ぴあ総研」の笹井裕子所長は、クラシックと他分野のコラボレーション(協業)の公演と位置付け「オーケストラ側からの観点では動員増の要因となり、シネマコンサートは普及する過程にある」と分析。対象となる映画は、ヒット作で音楽が印象的、効果的に使われた作品で権利関係がクリアされたもの。「ディズニー作品や『砂の器』などは定番化の傾向がみられる」としている。

 課題として、地方公演の難しさを挙げる。現状は都市圏での大会場の公演がほとんど。「権利料が安価になるなど条件がそろえば、そう大きくない地方の公共ホールなどを会場に実施することで全国的に普及が進むだろう」と話す。

ジェームズ・ボンド007「カジノ・ロワイヤル」inコンサート=2018年4月29日、東京国際フォーラムホールAで(キョードー東京提供)

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◆「シーンにピタリ」の極意 指揮者「譜面、画面、奏者」に目配り

楽譜脇のモニターに映る演奏タイミングを示す数字を指す指揮者の原田慶太楼=東京都千代田区で

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 東フィルは一九一一年に創立の国内最古の名門オーケストラ。シネマコンサートには積極的に応じている。最も苦労するのは、曲の始まりと終わり、楽器のソロ演奏を映画のシーンにピタリと合わせなければならないこと。岩崎井織企画制作課長によると、指揮者や奏者がイヤホンを装着し、映画に合わせて「カッ、カッ、カッ」という音を聞いてテンポを合わせる手法を取ることもある。「スター・ウォーズ」シリーズなど戦闘シーンが多い作品やアップテンポの曲が続く作品で有効という。

 「ハリー・ポッター−」の演奏リハーサルを見ると、指揮者の原田の譜面台の前には15インチほどのモニターがあるだけ。「モニターに演奏すべきポイントが記号や数字で示される。私はモニター画面と譜面を見ながら指揮棒を振り、その一方で奏者と目で合図を交わす。まばたきできず涙が出てくる」と原田。一方で「演奏は映画に合わせるだけと思われがちですが、ポイントさえ合えば個性は出せる」と胸を張る。

 公演では別の悩みも。通常の演奏会と違い、演奏しない時間が数十分続く場合もあり、「何もせず、お客さまの視線にさらされながら座っているのも疲れるものです」と岩崎課長。

 

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