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【放送芸能】

見えない壁 取り払え 障害者の性と自立を描く 映画「37Seconds」

「脚本を書き上げた時、『これは世に出すべき作品だ』と明確に感じた」と話すHIKARI監督=東京都渋谷区で

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 障害者の性と自立を明るいタッチで描いた映画「37Seconds(セカンズ)」が7日、公開される。米ロサンゼルス在住の日本人女性、HIKARI(ヒカリ)監督が初めて手掛けた長編。主演に演技初挑戦の脳性まひの女性を起用した作品に、HIKARI監督は「1人の障害がある女性が前向きに生きる物語を描き、健常者との壁を取り払いたかった」と思いを語る。 (酒井健)

 車いす生活のユマ(佳山明(めい))は二十三歳。漫画家のゴーストライターをしていたが、自立を目指しアダルト漫画を書こうと思い立つ。「性」を知るため街に出掛け、出張ホストを呼んだり、アダルトグッズ店を訪ねたり。そんな“冒険”を通じ、障害者専門の風俗嬢の舞(渡辺真起子)らと知り合うが、一緒に暮らすシングルマザーの恭子(神野三鈴)は激怒する。

 「仮に間違った選択をしても、人間はその中で人と出会い、学び、成長していける。人生って、そういうものだと思う」とHIKARI監督。タイトルは、障害の原因となった「出生時に呼吸が止まっていた秒数」を示す。

 「障害者と性」で始まる物語は後半、「自分を見つける」という普遍的なテーマに広がる。新たな友人を得て視野を広げたユマは、介護福祉士の俊哉(大東駿介)と共に、父の離婚後の消息を追う旅に出る。ユマは旅を通じ、肉親を巡る新しい事実を知る。

 「障害者も健常者も分かり合える、お客さん(観客)が寄り添っていける部分」とHIKARI監督は説明。「ユマが成長し、きれいになっていく過程を、障害者も健常者も一緒に見ている。そう感じてもらえるよう、カメラワークも工夫した」と振り返る。

 主演の佳山は、社会福祉士の資格を持つ二十五歳。「(自分の)人生で、何か見えてくるものがあれば」とオーディションに応募。「ピュアな雰囲気」(HIKARI監督)が決め手となり、約百人の中から選ばれた。「脚本は健常者の私が書いたが、うそはつきたくなかった」とHIKARI監督。作中のせりふのひとことを巡り、佳山と二時間にわたり議論したこともあったという。佳山には「せりふに対する反応など、自然で素朴なユマを演じてくれた」と評した。

 HIKARI監督は大阪市出身。米国の大学を卒業後、舞台女優などをしながら映画の脚本を書き続け、二〇一六年にNHKの脚本ワークショップに本作が合格。改良を重ねて映画化、昨年のベルリン国際映画祭で「パノラマ観客賞」と「国際アートシアター連盟賞」をダブル受賞した。米ハリウッドでの次回作も決まっているといい、今後も「メッセージ性と、前向きな爽快感のある作品をつくっていきたい」と意欲を燃やす。

大学での試写会で、取材と撮影に笑顔でこたえた佳山明=東京都港区で

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