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男同士の友情、愛情 映画「影裏」 大友啓史監督

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 2017年(第157回)の芥川賞受賞作を映画化した「影裏(えいり)」が14日、公開される。東日本大震災前後の盛岡市を舞台に、二人の孤独な男の不思議な関係を描いた作品だ。行方不明になった大切な人を捜し求め、深く知ろうとする主人公の姿に、同市出身の大友啓史監督(53)は「震災の被災地に生きる無名の人々の感情が映し出されている」と語る。 (酒井健)

 原作は沼田真佑(しんすけ)(41)の短編小説。転勤で盛岡に移り住んだ今野(綾野剛)は、地元出身の同僚、日浅(松田龍平)と気の置けない間柄となる。大自然の中に一緒に釣りに出掛けたり、酒を酌み交わしたり。しかし日浅は突然、会社を辞め、遅れてきた青春のような日々は終わりを告げる。そして「3・11」。日浅は津波で行方不明となり、消息を追う今野は、その過程で日浅の別の顔を知る…。

 「シンプルに言えば、二人の男の出会いと別れの物語」と大友監督。原作の魅力を「二人の感情の流れを(文章にせず)行間に忍ばせ、読者が探り当てるつくり」にあると紹介する。「その感情の流れと交錯を丁寧に表現すれば、静かだが面白い大人の映画ができる」と感じたという。

 今野はセクシュアルマイノリティー。日浅は定かではない。二人の関係には、異性間以上の緊張感がにじむ。喜怒哀楽だけではない、内面に隠された多様な感情を綾野と松田が表現している。そんな二人に「つぶさに感情をキャッチボールしながら、地に足を着け、実在の人物のように演じてくれた」と大友監督は感謝を込める。

 作中の二人の難しい関係をどう言い表せばいいのか。大友監督は最初に「友情」と言葉を選んだ上で「同じ時間や場所を共有しながら、二人の間にいろいろな感情が生まれ、お互いにとって大切なものとなる。それを友情といっても、愛情と呼んでもいいと思う」と説明した。

 大切な人を思う心は、その対象が異性でも同性でも、また肉親でも変わらない。映画の後半、今野は津波に消えた日浅の名を探し、新聞の避難者名簿をチェックする。実際の震災後の東北でも「家族や知人の情報を探して、日々向き合っていた人たちがいたはず」。しかし、今夏の東京五輪を前にして、そうした市民の感情について、大友監督は郷里への思いから「忘れ去られそうな気がしている」と危惧を募らせ、「作品に残しておきたいという気持ちもある」と語った。

 古巣のNHKでは社会派ドラマの「ハゲタカ」、映画ではアクション大作「るろうに剣心」などを手掛けてきた。一方で「個人の恋愛や、無名の人々の日常の思いを見つめることも大事だと思っている」。二人の男の関係を描いた“小さなドラマ”である「影裏」を「自分の原点に戻った作品」と位置づける。

「影裏」の一場面。酒を酌み交わす今野(綾野剛(右))と日浅(松田龍平)

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