東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 放送芸能 > 紙面から一覧 > 記事

ここから本文

【放送芸能】

神田松之丞 改め 伯山 いざ読み始め!

11日、東京・新宿末広亭で「中村仲蔵」を熱演する神田伯山(金子山撮影)

写真

 講談界の風雲児、第二章へ。人気講談師の神田松之丞(36)が真打ち昇進と同時に大名跡「神田伯山(はくざん)」を六代目として襲名した。11日から始まった披露興行は連日大盛況、絶好のスタートダッシュを決めた。講談界に長らく続いた沈滞ムードを打ち破り、新たな息吹をもたらした男が見据える次なる高みは−。 (神野栄子)

◆襲名披露は連日大盛況

松之丞として最後の通し読み「畔倉重四郎」を熱演=1月、東京・東池袋のあうるすぽっとで(橘蓮二撮影)

写真

 「盛り上がりすぎですよ」。十一日夜、東京・新宿末広亭で始まった披露興行の初日。お目当ての新・伯山が照れ笑いを浮かべて姿を見せると、徹夜組も含めた超満員の客席は拍手が鳴りやまないほどの熱気に包まれた。高座では、歌舞伎俳優が創意工夫で役作りを成功させた姿を描く「中村仲蔵」を約四十分間熱演。観客からは「待ってました」「日本一」などの声が掛かった。

 伯山は江戸後期に活躍した初代以来、講談を代表する名跡。五代目死去後、四十四年ぶりに復活した。終演後の記者会見では「この興行が、講談が世間に広がる一歩にもなれば」と心境を語った。

 ◇ 

二つ目ブームの火付け役、ユニット「成金」のメンバーたち。前列中央が松之丞=2017年12月、東京・イイノホールで

写真

 「今チケットを最も取りにくい講談師」と呼ばれる伯山。その原点は高校二年の時、ラジオで聴いて衝撃を受けた六代目三遊亭円生(一九〇〇〜七九年)の落語「御神酒徳利(おみきどっくり)」。大学時代は円生のような名人芸に触れ、その中で立川談志(一九三六〜二〇一一年)が称賛していた六代目神田伯龍(はくりゅう)(一九二六〜二〇〇六年)といった講談師のことを知った。それが道しるべとなり、大学卒業後の〇七年、三代目神田松鯉(しょうり)(77)=一九年に人間国宝認定=に入門し、松之丞を名乗った。

 落語に心酔したことが自身の芸の構築に生きた。めきめき実力を付ける中、ツイッターなどSNSで「まくらが面白い」「話が分かりやすい」と、“冬の時代”といわれた講談界では異色の評が広がった。特に男性の若手スターの登場が待ち望まれていて、そこで、歯切れのいい口調を磨いていた松之丞が頭角を現した。

 一三年九月には、所属する落語芸術協会のいきのいい二つ目の面々とユニット「成金(なりきん)」を結成。「二つ目ブーム」の火付け役となった(昨年九月に解散)。一七年春にはTBSラジオでレギュラー番組「問わず語りの松之丞」も始まり、歯に衣(きぬ)着せぬ毒舌と自虐話が支持され、その後はテレビでも引っ張りだこになった。伯山はターニングポイントとして「講談という枠をはみ出してやっているのをブレークと呼ぶなら、核になったのは間違いなくラジオ」と著書に記した。

 講談復権への使命感を持つだけに、大きな取り組みにも意欲を示す。その一つが今年一月、東京・東池袋の「あうるすぽっと」で五日間連続で披露した「完全通し公演2020〜畔倉重四郎(あぜくらじゅうしろう)」。江戸期の名奉行、大岡越前守の裁きの一つで、畔倉の狂気を帯びた人殺しをテーマにした作品。計十九席を一日三〜四話ずつ読み進めた。

落語芸術協会幹部や師匠の神田松鯉(左から2人目)らが並び、六代目神田伯山(同3人目)を祝福する「口上」(金子山撮影)

写真

 昔は連続ものを披露する会はよくあったが、「そんな時代じゃない」と言われて久しい。しかし、師匠の松鯉が師事した二代目神田山陽(一九〇九〜二〇〇〇年)から教わった連続ものの奥義を受け継いだ。まくらで確実に笑いを取って、観客の心をつかむ。本編に入るとすさまじい形相で希代の悪漢の世界に導く。熱気余って、張り扇が飛んだ時もあった。すごみや色気など、変幻自在の話芸に観客は身を乗り出し固唾(かたず)を飲んだ。

 公演の主催者によると、チケット購入者は女性が六割を占め、若い世代も目立った。横浜市から来たという三十代の女性会社員は「爽快感のある高座だった。自分と同じ世代で、『成金』の時から注目している」と語った。都立高校二年の男子(16)は「松之丞さんは物語をリアルに表現してくれて、『聴く小説』のようで本を読むより面白い。講談は一生の趣味になりそう」と得意げに話した。

 ◇ 

 講談界の革命児で、けん引役を担う伯山へさらなる期待も大きい。師匠の松鯉は「連続ものを復活させ、廃れた講談を本来の姿に戻したいという私が及ばなかったことまで担っている。これからもっとやってほしい」と目を細める。成金時代から互いに鍛え合い、昨年九月に真打ちに昇進した落語家の柳亭小痴楽(31)は「松(松之丞)はプロデュース能力にもたけ、絵(構想)を描ける人。松のまくらが面白くて、講談師に負けてなるものかと危機感を感じて頑張った」と振り返る。「松はものすごい稽古量で、新幹線の中で立ったまま稽古するほど。まくらも表現力も松、伯山さんが目標」と敬意を表する。

 伯山は「僕は、はやっているものと真逆を進んでいる。しかし、閉ざされたエンターテインメントだから面白い」と自身の芸を分析しつつ、「メディアに出て(新規の客の)『呼び屋』になりながら、『聴かせ屋』をやっているという自負は、生意気ながらある」ときっぱり。自分の突き進む道に迷いはない。

◆TV共演者の見た「伯山」

◇「5歳児の感情持つ」

滝沢カレン

写真

 神田松之丞改め伯山は、いまやテレビのバラエティー番組でもすっかりおなじみの顔になった。伯山の人となり、芸の魅力を共演者に聞いた。

 テレビ朝日系「松之丞カレンの反省だ!」改め「伯山カレンの反省だ!!」(土曜深夜零時十分)で珍問答を繰り広げるタレント滝沢カレンは昨夏、番組の関連で初鑑賞した伯山の講談に「メチャメチャすごい迫力です! 脳が顔の目の前にくるぐらい、脳が積極的になってのめりこんだ」と驚きぶりを独特の言い回しで表現する。

 番組での伯山に「講談のかっこよさはないが、素の部分を見せてくれます。強がらず、うそをつかない素直な方。講談の時とはまったく違う顔です」と明かし、「“普通の人間”に戻った時は、いい意味で成長していない。ずっと五歳児みたいだし、生まれたままの感情を持っているような感じ。貴重な生物だと思う。伯山になっても変わってほしくないですね」とカレン節全開で語った。

◇「話の切り口が新鮮」

弘中綾香アナ

写真

 漫才コンビ「爆笑問題」の太田光と毒舌を交えて、視聴者からの相談をテーマに語り合う同局系「太田松之丞」改め「太田伯山」(水曜深夜に不定期放送)で、進行役を務める弘中綾香アナウンサーは、松之丞時代からラジオ番組を聴いていたといい、「世相を斬るお話も切り口が新鮮。うそがなく聴いていて気持ちがいい。講談という話芸を確立されているからこそ、攻めの姿勢で仕事に携わっている印象を受けます」と話す。

 弘中アナも昨年初めて高座を聴いた。「声の素晴らしさ、声色の使い分け、間合い、あの集中力…。感動しました」。番組では「小気味よく主張していますが、人を不快にさせない、そのバランスの取り方が勉強になります」と率直に語り、「私がそうだったように、多くの視聴者にとっての講談の入り口になってほしいですね」と笑顔を見せた。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報