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【放送芸能】

進化 壮麗 東宝ミュージカル「エリザベート」20年の魅力

 東宝ミュージカル「エリザベート」が二〇〇〇年の上演スタートから今年で二十周年を迎えた。美貌のエリザベートと、「死」という概念を擬人化した黄泉(よみ)の帝王トートの愛の物語。日本で上演されるミュージカルの中でも、特にチケットが入手困難となる人気作で、春から夏にかけて東京、大阪、名古屋、福岡の四都市で上演予定。長く支持され、愛され続ける、その理由は−。(山岸利行)

◆多彩な名曲 役に自分の人生重ねられる エリザベート役・花總まり

ミュージカル「エリザベート」に出演する花總まり

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 「『エリザベート』は私の運命を変えてくれた作品。こんなにも大きな存在になるとは思いもしませんでした」

 東宝版に先行して、日本で初めて一九九六年に上演された宝塚歌劇団の「エリザベート」でタイトルロールのエリザベート役を演じた花總(はなふさ)まり(47)は、こう話す。九八年の再演でも同じ役を務め、二〇一五年からは東宝版の舞台に上がり、今年も大役を任された。

 十九世紀のウィーンを舞台に、実在したオーストリア皇后エリザベートの人生を、ハプスブルク家が衰退していく歴史とともに描く。

<昨年> 昨年のエリザベート役・花總まり(左)、トート役・井上芳雄

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 ミュージカルの上演回数は人気の裏付けともいえる。「ラ・マンチャの男」(日本初演一九六九年)が千三百七回、「レ・ミゼラブル」(同八七年)が三千三百三十六回、「ミス・サイゴン」(同九二年)が千四百六十三回などとなっているが、東宝の「エリザベート」は昨年までの十九年間で千四百回と、ハイペースでの上演が続く。

 宝塚時代の初演からおよそ四半世紀、エリザベートと向き合う花總は「耳に残る、心揺さぶられる名曲が多い。老若男女さまざまな人物が登場し、見る方がそれぞれの役に自分の人生を重ねられる作品」と魅力を語る。

 束縛から逃れ自立して生きようとするエリザベートに恋心を抱くトート、夫である皇帝フランツ、息子ルドルフ、姑(しゅうとめ)ゾフィーなどの登場によって物語が進みながら、「私だけに」「最後のダンス」「闇が広がる」「夜のボート」など、場面に応じた印象的で多彩な曲調のメロディーが流れていく。

<2000年> 2000年のエリザベート役・一路真輝(手前)とトート役・山口祐一郎

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 「歌の多さと音域の広さなど難しさや苦労もありますが、一人の人物の若い時から老いていくまでを歌で表現していく面白さもあります」

 当初は「無機質で堅く冷たい」ととらえたエリザベート像だったが、次第に「どうしようもない深い悲しみや愛情などを抱えた」皇后と感じるようになり、人間らしさが感じられるような舞台を心掛けてきた。

 宝塚初演の時は「(観客に)受け入れられるだろうか? ドキドキしました」と当時の心の内を明かすが、超人気作品となった今、「毎回『こうなのかな』と思いながら演じていますが、何が正解なのか分からない。見てくださる方の心に残る何かがあれば。心を込めて演じるのがすべてです」。

    ◇ ◇ ◇

 東宝ミュージカル「エリザベート」は、東京・帝国劇場(四月九日〜五月四日)、大阪・梅田芸術劇場(五月十一日〜六月二日)、名古屋・御園座(六月十〜二十八日)、福岡・博多座(七月六日〜八月三日)で上演予定。東宝テレザーブ=(電)03・3201・7777。

20周年公演の製作発表記者会見に出席した(左から)山崎育三郎、愛希れいか、小池修一郎、花總まり、井上芳雄、古川雄大=東京都内で

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◆キャスト世代交代 生まれる化学反応 演出/訳詞・小池修一郎

ミュージカル「エリザベート」の演出を手がける小池修一郎さん

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 宝塚版初演から演出と訳詞を担う小池修一郎(65)は作品の理解にあたり、「歴史もの」「女性の自立の闘い」「死をめぐるファンタジー」という観点を挙げる。エリザベートという実在の人物がハプスブルク家に嫁ぎ、古い慣例やひどい現実と闘いながら、「死」を意識しつつ幻想的な世界に引き込まれそうになる、という流れが作品の根底にあるが、話の内容の暗さなどから「受け入れられないのでは」と思ってのスタートだったという。

 だが、「がんで死にそうだった人が、死と闘うエリザベートの姿を見てがぜんやる気になったという話もあった」と言い、お飾り的な皇后ではなく、自分のために強く生き抜こうとするエリザベートの姿勢が注目され「『私が私のために生きて何がいけないの』という生き方に多くの人が納得するのではないか」と、エリザベート人気を分析する。

 また、「宝塚と東宝が交互に上演してきた相乗効果」という側面も指摘。「時代時代でキャストの世代交代が進んで違う血が加わり、役者のエネルギーを取り込んでいる」と作品の進化を語る。

 文学座出身の内野聖陽=写真(右)=や劇団四季出身の石丸幹二=同(中)=らが歴代トートを演じ、歌舞伎役者の尾上松也=同(左)=も主要な役で舞台に上がるなど、多彩な俳優陣が出演するのも特徴で、「他ジャンルの人と切磋琢磨(せっさたくま)することで化学反応が起き、役者は伸びる。異種格闘技でもある」と言う。

 劇的なストーリーと甘い音楽に、勢いのあるキャストが加わることで、これからも時代ごとの「エリザベート」が生み出されていきそうだ。

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◆ロマンチックな物語受け入れられた

<演劇評論家・萩尾瞳さんの話> 宝塚版(1996年初演)があったから「エリザベート」は日本に定着したと思う。ウィーン・オリジナル版の主役(エリザベート)を、宝塚版ではトート(死)に替えて、「死」が人間に恋をするという幻想的なラブストーリーにした。ウィーン版では一風変わった評伝ミュージカルだったのが、ロマンチックな物語として日本に登場し、観客に受け入れられた。

 米ブロードウェーとはひと味違う、ヨーロッパ的雰囲気を持った音楽も魅力。歴史を踏まえた「ベルサイユのばら」「レ・ミゼラブル」も人気だが、日本のミュージカルファンが歴史好きという背景もありそう。

 再演を重ねるたびにキャストがどうなるのかも話題になる。東宝版のスタート時、内野聖陽のトート役といった意外性や、前回全く異なったキャラクターを演じていた山崎育三郎が今年はトート役になるなど、興味深い。

 課題はチケット。人気作品には共通した問題で、「エリザベート」も取りにくい。インターネット全盛の時代だが、ネットが苦手な高齢の方もいらっしゃる。ミュージカルを初めて見る人にも適した作品なので、解決法はないものか。 

 ミュージカル「エリザベート」 1992年、ウィーンで初演。オーストリア皇后エリザベートと、彼女を愛する黄泉の帝王トート(死)との葛藤を軸に、皇帝との夫婦関係、皇太后との確執、息子との親子関係などを織り込んで描く。ミヒャエル・クンツェ(脚本・歌詞)、シルベスター・リーバイ(音楽・編曲)による作品。

 ※公演やイベントなどは、新型コロナウイルスの感染防止のため中止や変更の可能性があります。

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