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【伝統芸能】

<能>東京五輪・パラ見据え 多言語対応など多彩に魅力発信

 二〇二〇年の東京五輪・パラリンピックに向け、能楽界が動きだす。能楽師らでつくる能楽協会と日本能楽会は東京都内で記者会見し、今夏と五輪・パラリンピック期間中に、能楽の魅力を発信する公演の開催を発表した。会見後のシンポジウムでは、東京五輪・パラリンピック開閉会式の演出を総合統括する野村萬斎らが出席。第一線の能楽師たちは現状に危機感を募らせつつ、「五輪期間中は発信の好機」という意見が相次いだ。 (山岸利行)

 会見の冒頭、能楽協会の観世銕之丞(てつのじょう)理事長は「二〇年に向けて文化的な波を起こしたい。歴史ある能楽の深い味わいを知っていただきたい」、日本能楽会の粟谷能夫(よしお)常務理事は「日本文化を再発見していただけるチャンス」と、それぞれ能楽の普及に向けて意欲を見せた。

 普及に向けた公演は、今年七月三十一日と八月四日の「ESSENCE(エッセンス)能」で、能楽の魅力をあらゆる人に発信する。手話通訳、点字パンフレットなどでサポートする「バリアフリー対応」、英語、中国語、韓国語、日本語の四カ国語での「多言語対応」などを企画。装束や能面の解説講座や、演者と写真撮影できるコーナーも予定している。

 五輪期間中の七〜八月の計十日間は「能楽フェスティバル2020 日賀寿(ひかず)能(仮称)」として、各流の宗家や人間国宝が一堂に会しての“オールジャパン態勢”で能や狂言の名作を上演。八〜九月のパラリンピック期間中も上演する。

 能楽協会の大倉源次郎理事は「ネットやSNSも活用して若い世代へも発信していきたい」と話した。

 公演はいずれも東京・千駄ケ谷の国立能楽堂。五輪のメインスタジアムが近く、関係者は多くの来客を期待している。

  ◇ 

 「2020東京オリンピック・パラリンピックへ向け、能楽の未来を展望する」と題して開かれたパネルディスカッションでは、野村萬斎(狂言方和泉流)が司会を担当、パネリストとして観世清和(シテ方観世流二十六世宗家)、宝生和英(かずふさ)(シテ方宝生流二十世宗家)、観世銕之丞(シテ方観世流)の三人が登壇、現状や課題を語り合った。

 一七年春、東京・銀座の商業施設の地下に観世能楽堂が完成。好環境が整ったが、清和は「外国の方の往来が多くなったが、お能といえば、『Oh、No!』。(能楽堂がある)地下まではなかなか来てもらえない」と現状を説明した。

 和英は「能を見たことで人生がどう変わるのかを提案しなければならないと思う」とし、「心を静める効果があり、自分を見直す時間」という持論を披露した。萬斎は「能は分からないと言われる。文言が難しいだけなのかもしれない。(初めて見た人に)『こんなものか』と言われるのも悔しい」と悩ましげ。舞台好きの観客はミュージカルに流れている、との萬斎の指摘に和英は「ピンチはチャンス。想像する楽しさを教えるのに能楽を使うこともある。ここでしっかりやらないと」と気を引き締めた。

 銕之丞は「前回(一九六四年)の東京五輪時も日賀寿能を開催した。現在も『能楽健在なり』を示したい。人の心の中に能楽を求めているものがあると信じてやっていきたい」と意気込んだ。萬斎は最後に「魂を癒やし、再生を願うのが能楽。万物に平等であるというのも五輪、パラリンピックの精神に通じる。すべての礎は能楽にあると思う」と締めくくった。

 

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