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【伝統芸能】

<中村雅之 和菓子の芸心>ゆったり待つ楽しみ 「ういろう」(神奈川県小田原市・ういろう)

イラスト・中村鎭

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 古典芸能と和菓子について書くと決まった時から、いつかはと思っていたのが「ういろう」だ。

 「ういろう」は、米粉などの穀粉と砂糖を練って、型に入れて蒸籠(せいろう)で蒸して作る。全国各地で名物菓子とされているが、元は「透頂香(とうちんこう)」という、頭痛などに効く、黒くて苦い丸薬の通称だった。

 「歌舞伎十八番」にも数えられる「外郎売(ういろううり)」は、まさに「立て板に水」の口上がウリ。はじめは「透頂香」の由来や効能を説くが、しまいに早口言葉を連ねる。アナウンサーの研修にも使われるほど難しい。

 今でも、「透頂香」と甘い方の「ういろう」の両方を商っているのが小田原の「ういろう」。この店の先祖は、中国・元の医官だった陳延祐といわれる。元が明に滅ぼされると日本に逃れ、官名の一部を取り「陳外郎(ちん・ういろう)」を名乗った。

 子孫は、「透頂香」とともに蒸菓子(むしがし)も作り評判となる。やがて、いずれも「ういろう」の名で親しまれるようになる。

 しかし、いざ注文しようとして驚いた。万事便利が当たり前の世の中で、ネットでの「お取り寄せ」もできなければ、「デパ地下」でも買えない。電話で注文し、代金と送料を現金書留で送ってほしい、とのことだった。

 種類は、白砂糖、抹茶、小豆に、他では見たことがない杏仁(あんにん)までいろいろ。「ういろう」が生まれた頃には、まだ黒砂糖しかなかったはず。まずは元祖を味わってみよう、と、「黒」を1本注文した。手間も、時間も、お金も掛かるが、これも良し。待つのを楽しもう!

 令和の世。平成を通り越して、昭和のゆったりした時間の流れが懐かしくなった。

 (横浜能楽堂芸術監督)

 <ういろう> 神奈川県小田原市本町1の13の17。(電)0465・24・0560。1本756円など。

 

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