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【伝統芸能】

誰でも音が出る「メタル尺八」 東京の工房「もっと気軽な楽器に」

 尺八といえば、節のある竹製の伝統楽器だが、金属製のスマートな尺八が誕生した。気候環境などによっては割れてしまうという弱点を克服するため、丈夫で軽く、加工のしやすさなどからアルミニウムを素材に選んだ。果たして普及するのか? そして肝心な音色は? (山岸利行)

 「竹だと品質にばらつきがある。内部構造が一定の、普遍的な楽器をつくりたかった」

 東京都狛江市の泉州尺八工房。プロの尺八奏者で、工房代表の三塚幸彦(みつかゆきひこ)(65)が、シャンパンゴールドに輝く尺八を手に笑顔を見せた。

 完成したアルミ製尺八は長さ約五十四センチ(一尺八寸)、重さは約五百五十グラム。平均的な竹製の尺八(四百グラム程度)より少し重く、手に持つとずっしりとした感じがする。さまざまなサイズの尺八があるが、これが「D管」と呼ばれる基本的なサイズだ。

 一般的な尺八には表に四つ、裏に一つ、計五つの指孔がある。竹の場合、太さや形状などが一本一本異なり、指孔の位置や大きさ、内径などに微妙な違いが生じてしまう。筒に吹き込んだ空気が振動して音が出る仕組みで、それぞれに個性があり、それが尺八の魅力にもつながる。

 だが、「海外で尺八がブームになっているが、乾燥などで割れてしまうことがある。どんな環境でも壊れず、設計図をもとにした尺八をつくりたかった」と三塚。工房を立ち上げて三十五年になるが、二十年ほど前からこんな構想を持つようになった。

 通常、尺八は名品といわれるものの内径を測定して制作、三塚もかつてはそうだった。だが、内径を同じにしても竹の太さ、形状が違う以上、同じ鳴り方にはならない。

 そこで、三塚自ら吹いた時の感触と音の高さを元に、内部を削る製法をスタート。十ミクロン(百分の一ミリ)の精度にこだわるほど本格的な取り組みで、自身がセンサーになって高性能の構造を模索、膨大なデータをとり続けた。数年前からデータをコンピューターに入力し、3Dプリンター出力によるモデルを制作。軽量で容易に加工できるアルミを素材に選んだ。試行錯誤を重ねた末に昨年暮れ、“究極の尺八”が完成した。

 「音の幅が広がり、いくらでも大きな音が出せる。滑らかできれいな音が出て、吹いていてストレスがない」とアルミ製尺八の特長を話す三塚。吹いてもらったが、確かに滑らかな音色が印象的。「吹いてみますか」と勧められ、そーっと口を当てて吹いてみると、素人でも普通に尺八の音が出て、感動した。竹製と異なり四つに分割でき、持ち運びや手入れもしやすいのも画期的だ。

 尺八は音を出すのが困難な印象があり、三塚も「鳴らすだけで時間がかかるような、難しいイメージがいや。もっと気軽に触れてほしい」。

 現在商品化に向けて準備中で、価格も検討中。アルミ製尺八の製造・販売を手掛ける会社の宗安秀夫(52)は「木やプラスチック製の尺八も見据えており、学校教育の場で普及すれば」と期待を込める。

◆音色「竹との違い分からない」

<2012年国際尺八コンクールで優勝し、国内外で活躍している尺八奏者の岩田卓也(39)の話> 7月からライブでアルミ製尺八を使っているが、精密なつくりで吹いていてストレスがない。目をつぶって聴くと、竹との違いは分からない。きれいな音で雑味がなく、吹いたことがない人でも普通に鳴るので、楽器としてのポテンシャルは大きい。竹製はそれぞれにくせがあるのが特長ともいえるが、僕でも鳴らないものもある。誰が吹いても鳴るような尺八が広く普及していけばいい。海外では乾燥して割れやすい。海外の奏者は「メタル尺八」に興味津々で普及しやすいと思う。

 

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