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【伝統芸能】

<阿部さとみ 花に舞い踊る>(菊) 王の枕をまたぎ追放

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 主に初秋から晩冬にとりどりの花を咲かせる菊。日本の国花でもあり、長寿の妙薬としても用いられることなどからおめでたいものとされ、日本舞踊にも「菊の栄(さかえ)」「菊の露」など菊をモチーフとした作品がたくさんあります。

 今回、ご紹介するのは「菊慈童(きくじどう)」。九月の東京新聞主催「第五十五回推薦名流舞踊大会」(東京・国立大劇場)では、花柳園喜輔(そのきすけ)が同曲を上演。確かな表現力をもって品格ある舞台を見せました。

 古代中国、周の穆王(ぼくおう)に仕えていた慈童という少年が、王の枕をまたいだ罪で深山に追放されました。王が温情で自ら枕に記して与えた法華経を、慈童が菊の葉に書き写すと、滴り落ちる露が不老不死の霊薬となり、少年の姿のまま七百歳の長寿を保ちます。慈童は名を彭祖(ほうそ)と改めましたが、宮中での華やかな生活を思い、王の寵愛(ちょうあい)深かった昔を懐かしむという内容。祝言性の高い能の「枕慈童(まくらじどう)」「菊慈童」をもとにしながら、思いを訴えるクドキや廓(くるわ)情緒など、江戸の気分が盛り込まれている一曲です。

 現代においては、なぜ枕をまたぐことが罪なのか疑問に思われるかもしれません。しかし、この話の舞台である中国ばかりではなく、日本でもまたぐという行為は行儀が悪いばかりでなく、またいだものを侮辱することとみなされました。さらに枕はその人の頭とも考えられましたから、慈童は王の頭をまたいだも同然。追放の身となったのです。菊の花咲く山中、仙人となった慈童。その瞳には何が映っているのでしょうか。 (舞踊評論家)

「菊慈童」を踊る花柳園喜輔=「第55回推薦名流舞踊大会」から

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