東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 放送芸能 > 伝統芸能一覧 > 記事

ここから本文

【伝統芸能】

<新かぶき彩時記>「袖萩祭文」の枝折戸 会うこと許されぬ母娘

写真

 雪の降りしきるなか、戸を隔てて会う事が許されない母と娘。そんな場面が印象的なのが奥州安達原(おうしゅうあだちがはら)の「袖萩祭文(そではぎさいもん)」です。

 源氏に抵抗した地方豪族・安倍貞任(さだとう)の末期と、ゆかりの女性・袖萩の物語。袖萩の父・平〓仗直方(けんじょうなおかた)は、警護中の皇弟を拉致された責任を問われます。朝廷の使者は、今日中に皇弟が見つからなければ切腹するよう勧告します。

 父の危機を聞きつけ、娘・お君と皇弟の館へやって来た袖萩。親の反対を押し切って浪人と駆け落ちした後、夫は行方不明となり、自身は盲目の身に。実はこの夫こそ、源氏打倒のために身をやつした安倍貞任であり、朝廷の使者も貞任の偽装でした。

 武家の倫理観から、会いたい心を抑えて袖萩を追い返そうとする直方。母の浜夕は夫に隠れて、落ちぶれた旅芸人となっている袖萩に祭文(語り唄)を唄うよう命じ、袖萩は唄にたくして不孝をわびます。

 親子を館の内と外に隔てる戸が、越えられない一線の象徴。寒さに震える零落した娘と、立派な館の中の父母を対比させて、立場の違いを際立たせています。

 作者の近松半二は対比の手法が得意で、「妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)」では、川の両岸に隔てられた敵同士の家の恋人たち、「新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)」では、丁稚(でっち)・久松をめぐり対立する田舎娘・お光と、裕福な町娘・お染など、いろいろな設定を試みています。

(イラストレーター・ 辻和子)

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報