東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > イベント情報 > 美術一覧 > 世界遺産 国立西洋美術館開館60周年記念 ル・コルビュジエ 絵画から建築へ−ピュリスムの時代 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

世界遺産 国立西洋美術館開館60周年記念 ル・コルビュジエ 絵画から建築へ−ピュリスムの時代

<拝啓 ル・コルビュジエ様>(上)隈研吾 貴方の前半生の白い箱は好きになれない。しかし…

隈研吾

写真

 世界遺産の国立西洋美術館を設計したル・コルビュジエは「近代建築の三大巨匠」の一人に数えられる。既存の価値観を打ち破り、人が居住する理想の空間を追求した建築思想は世界中で多くの匠(たくみ)たちに影響を与えた。「ル・コルビュジエ」展の開催を機に、日本を代表する3人の建築家に、巨匠への思いを寄せてもらった。

◆後半生の粗々しさに惹かれる

 貴方の前半生の白い箱は好きになれない。しかし、後半生の、きたないほどに粗々しい作品群に、強く、惹(ひ)かれる。

 インドのチャンディガールの都市計画を依頼されてインドの赤い大地を訪れたことが、貴方の転機になったと、僕は推測する。そこに、白い精密な箱をつくることなど、不可能であることは、一目瞭然であった。正確さとは無縁な場所であり、人達(ひとたち)であったに違いない。新しい、粗い場所との出会いが、作風を変え、人間を変えた。

 僕も、貴方にならって粗々しい大地を訪ね続けている。そこで建築を作ることは決してなまやさしくはないが、その困難が別のことに気づかせてくれる。別の美学、別の倫理に、僕を導いてくれる。

インド北西部「チャンディガール」の主要建築物

写真

白を基調としたサヴォワ邸(C)下田泰也/Echelle−1

写真

◆白い箱とチャンディガール

 ル・コルビュジエの建築思想を端的に表現した言葉が「住宅は住むための機械である」−。富や権威を象徴する様式、装飾を排除し、合理性・機能性を追求した。この思想は、前半生の代表作で「20世紀を代表する住宅建築」とも称賛された「サヴォワ邸」(1928〜31年)などで結実する。装飾につながる色彩も抑えられたことから「白い箱」とも形容された。

 後半生で最大の事業となったのが、独立後間もないインド北西部での新都市「チャンディガール」建設(51〜64年)だった。西欧的な近代建築技術の下地のない現地にコルビュジエは年2回のペースで訪れ、現地の人々と暮らし生活を肌で感じるよう心掛けたとされる。伝統的なインドの建築要素も取り込み、気候風土に対応した「赤い大地での合理性」を突き詰めた。

<くま・けんご> 1954年横浜生まれ。東京大学建築学科大学院修了。米コロンビア大学客員研究員を経て、隈研吾建築都市設計事務所を設立。2009年より、東京大学教授。代表作に根津美術館、東京・銀座の歌舞伎座など。新国立競技場の設計も行う。

 <展覧会情報>ル・コルビュジエの原点となった絵画や資料を、彼自身の建築の中で紹介する「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ−ピュリスムの時代」展(東京新聞など主催)は5月19日まで国立西洋美術館で開催中。詳しくはハローダイヤル=03(5777)8600=もしくは公式HPへ。

 

この記事を印刷する