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世界遺産 国立西洋美術館開館60周年記念 ル・コルビュジエ 絵画から建築へ−ピュリスムの時代

<拝啓 ル・コルビュジエ様>(中)安藤忠雄 その背中が人生の道標であり光

安藤忠雄 撮影:閑野欣次

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 「コルビュジエ」を思い、語ろうとすると、行き着くのはやはり、その創造的生命力の圧倒的“勁(つよ)さ”です。人間、年を経れば徐々に衰え、円熟の方向に向かうのが普通でしょう。しかしあなたは、40代半ばに近代建築の“革命”と呼ぶに相応(ふさわ)しい大仕事を成し遂げた挙句(あげく)、大戦を挟んで晩年に入ると、今度はその過去を全否定するかのような作品世界へと、より激しくラディカルに突き進みました。

 初めての渡欧で“白の時代”から《ロンシャンの礼拝堂》へと、足跡を辿(たど)った時の驚きと感動は今も忘れません。建築とは、これ程(ほど)に“自由”な挑戦に満ちたものとなり得るのか、人間とはこれ程貪欲につくり、生きることが出来るのか−。今なお、その背中が私の建築と人生の道標であり、光です。

「近代建築の5原則」を満たす住宅。 東京芸術大学美術学部建築科益子研究室(当時)製作 《ヴァイセンホフ・ジードルンクの住宅》 1/50模型 1988年 広島市現代美術館 (C)下田泰也/Echelle−1

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ロンシャンの礼拝堂(C)下田泰也/Echelle−1

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◆近代建築“革命”と「ロンシャンの礼拝堂」

 ル・コルビュジエは1926年、「近代建築の5原則」を提唱した。屋根を水平にして憩いの空間にする「屋上庭園」や大きな横長の「水平連続窓」などで構成されている。数年後にはこれら5原則を満たす住宅建築を次々に完成させ、近代建築“革命”を成し遂げたと評価される。

 ところが、第2次世界大戦後、破壊されたパリ郊外の「ロンシャンの礼拝堂」再建を依頼されると、「5原則」や、それらが目指す機能・合理性にもとらわれない新たな宗教建築を創造させた。この再建で自身が課したテーマは礼拝堂に不可欠な「音響的」。耳の形を模したような塔、カニの甲羅を模した屋根、歪曲(わいきょく)した壁、不規則な無数の窓…。そのいずれもが「5原則」の合理性には収まらない異次元のコルビュジエ空間を生み出していた。

<あんどう・ただお> 1941年大阪生まれ。独学で建築を学び、69年安藤忠雄建築研究所設立。エール、コロンビア、ハーバード大学の客員教授歴任。97年から東京大学教授、現在、名誉教授。代表作に光の教会、地中美術館など。95年プリツカー賞受賞。

<展覧会情報> ル・コルビュジエの原点となった絵画や資料を、彼自身の建築の中で紹介する「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ−ピュリスムの時代」展(東京新聞など主催)は5月19日まで国立西洋美術館で開催中。詳しくはハローダイヤル=03(5777)8600=もしくは公式HPへ。

 

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